ストーリー
敏腕映画プロデューサー・ポンポさんのもとで製作アシスタントをしているジーン。 映画に心を奪われた彼は、観た映画をすべて記憶している映画通だ。 映画を撮ることにも憧れていたが、自分には無理だと卑屈になる毎日。 だが、ポンポさんに15秒CMの制作を任され、映画づくりに没頭する楽しさを知るのだった。 ある日、ジーンはポンポさんから次に制作する映画『MEISTER』の脚本を渡される。 伝説の俳優の復帰作にして、頭がしびれるほど興奮する内容。大ヒットを確信するが……なんと、監督に指名されたのはCMが評価されたジーンだった! ポンポさんの目利きにかなった新人女優をヒロインに迎え、波瀾万丈の撮影が始まろうとしていた。
引用元:https://filmarks.com/movies/93339
杉谷庄吾【人間プラモ】の同名コミックを劇場アニメ化。大物映画プロデューサーの孫で自身もその才能を受け継いだポンポさんのもとで、製作アシスタントを務める映画通の青年ジーン。映画を撮ることに憧れながらも自分には無理だと諦めかけていたが、ポンポさんに15秒CMの制作を任され、映画づくりの楽しさを知る。ある日、ジーンはポンポさんから新作映画「MEISTER」の脚本を渡される。伝説の俳優マーティンの復帰作でもあるその映画に監督として指名されたのは、なんとジーンだった。ポンポさんの目にとまった新人女優ナタリーをヒロインに迎え、波乱万丈の撮影がスタートするが……。「渇き。」の清水尋也が主人公ジーン役で声優に初挑戦。新人女優ナタリーを「犬鳴村」の大谷凜香、ポンポさんをテレビアニメ「スター☆トゥインクルプリキュア」の声優・小原好美がそれぞれ演じる。監督・脚本は「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」「劇場版『空の境界』第五章 矛盾螺旋」の平尾隆之。
2021年製作/90分/G/日本
配給:角川ANIMATION
劇場公開日:2021年6月4日
引用元:https://eiga.com/movie/91732/
登場人物・キャスト
ペーターゼンフィルム
- ジーン・フィニ
- 声 - 清水尋也[9]
- 本作の主人公。ポンポのアシスタント。映画監督を目指しペーターゼンフィルムに入社した。採用理由はポンポさん曰く「目の輝きがないから」。鬱屈した青春時代を送っており、映画だけが心の支えだった。
- ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネット
- 声 - 小原好美[9]
- 本作のヒロイン。主人公の映画プロデューサー。見た目は幼い少女に見えるが年齢は不詳。通称は「ポンポ(さん)」。敏腕だが、普段はB級映画ばかり撮っている。プロデューサーとしてのポリシーと幼少期の体験から、上映時間が2時間を超える長い映画を嫌っている。誕生日は4月4日[10]。
俳優
- ナタリー・ウッドワード
- 声 - 大谷凜香[9]
- 俳優志望。オーディションに落ち続けていたが、ポンポの新作映画のヒロイン役に抜擢される。
- ミスティア
- 声 - 加隈亜衣[9]
- 若手俳優。夢は自分の出演する映画をプロデュースすること。
- マーティン・ブラドック
- 声 - 大塚明夫[9]
- 伝説的俳優。10年ほど実質的な引退状態だったが、ペーターゼンに請われて「MEISTER」に出演する。
- レオン・ポールウェイド
- 「マックスストーム2」主演。
- クリスティア・ロックウェル
- 「マックスストーム2」ヒロイン。
映画関係者
- ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼン
- 声 - 小形満[11]
- 元映画プロデューサー。ポンポの祖父。多数のヒット作を手掛け、ポンポにコネクションを引き継がせて引退した。なぜかジーンの名前を覚えず、必ず間違う。
- コルベット
- 声 - 坂巻学[11]
- 映画監督。ポンポの右腕。ポンポ好みのB級映画を撮ることに長けている。
- ウェズ・G・マクティアナン
- 映画プロデューサー。「マックスストーム2」のプロデューサー。
ペーターゼンフィルムの近くにあるダイナー。
- フランチェスカ・マッツェンティーニ
- 声 - 野水伊織[11]
- 俳優志望。通称は「フラン」。エッグノッグでアルバイトとして働いている。
- ユーゲン・マイルスジャック
- エッグノッグの雇われ店長。俳優でもあるが売れていないため、店長を兼任している。
- キャロル・ロンシュタット
- コンポーザー。エッグノッグの客。
- マーリン・ユーチノフ
- 脚本家。エッグノッグの客。
- カーナ・スワンソン
- フランの後輩。
その他
- アラン・ガードナー
- 声 - 木島隆一[12]
- 映画オリジナルキャラクター。大手銀行「ニャリウッド銀行」に勤務するエリート銀行員。ハイスクール時代はジーンとは同級生で、商談に向かった先で、同じ地に映画撮影に来ていたジーンと再会する。仕事に行き詰まりを感じ退職を考える中、ジーンの映画制作が危機に陥ったことを知り行動を起こすことになる。
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/映画大好きポンポさん
感想
敏腕プロデューサーのジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットこと「ポンポさん」のもとで制作アシスタントをしていたジーン・フィニは、15秒CMの出来栄えを評価されて、ポンポさんがプロデュースする映画『MEISTER』の監督を任されるが……。
いわゆる映画製作ジャンルと呼ばれる作品らしいです。
映画に限らず、制作(芸術)をテーマにした作品は多く、芸術に携わる人は自身の芸術論や制作の苦悩を表現したいと思うんですよね。
例えば芥川龍之介の『地獄変』や『戯作三昧』などは、芸術至上主義の芥川らしい芸術論が語られていますし、漫画作品でいえば最近アニメ化された『ブルーピリオド』や漫画制作の苦悩を描いた『バクマン。』、アニメーション映画化されることが決まった『チェンソーマン』で知られる藤本タツキさんの『ルックバック』、アニメ制作を描いた『映像研には手を出すな』『SHIROBAKO』など創作をテーマにした作品は多いです。
何かを生み出すこと、つまり創作には生みの苦しみが必ず存在して、そこには人間ドラマが生まれます。
創作者は自身の創作論を語りたい欲求があるんですよ。
何かを生み出すことは苦しいですが、それ以上に楽しいことでもあり『映画大好きポンポさん』には創作の苦しさと楽しさが詰まっているように感じました。
本作の主人公・ジーンくんは『「映画製作に携わるか」「携われないなら死ぬか」のどちらかだ』と考えるほど映画しかない人なのです。
そんな彼が、ポンポさんに見初められられた理由にバニラは衝撃を受けたのです。
ジーンくんはどうして自分をアシスタントに選んでくれたのか? とポンポさんに聞くんですね( ̄▽ ̄)
するとポンポさんはなんと答えたと思いますか?
それはジーンくんの「目に光がなかったからよ。他の若い子はね、光り輝く青春を謳歌してきましたって顔をしてたのよ。だけど、満たされた人間っていうのは物の考え方が浅くなるの。幸福は創造の敵。彼らにクリエイターとしての資格なし。そういう連中に比べてジーンくんは社会に居場所のない追い詰められた目をしているの」
そこまで言ってポンポさんは「褒めてるのよ」とほほ笑んだ。
「現実から逃げた人間は心の中に自分だけの居場所を作る。社会と切り離された精神世界の広さ、深さこそがクリエイターとしての潜在能力の大きさなの」
ポンポさんはジーンくんの口にドーナツを押し込み、話しを続ける。
「だから私は、社会不適合な目をしたきみに、期待してるのよ」
と、打ち明けるんですね( ̄▽ ̄)
このクリエイター論に「なるほどな~」とうなずいたんですよ。
当然すべてのクリエイターに当てはまるわけではありませんが、確かに幸福だと考えが浅くなる気がします。
岡本太郎は「芸術とは爆発だ!」といったそうですが、その爆発とはフラストレーションの爆発なのだとバニラは思うのです。
フラストレーションが芸術を生み出すエネルギーになり、幸福だとフラストレーションは溜まりません。
例えば、つい最近観た『ベルサイユのばら』の作者・池田理代子さんも若いころは空想癖と動作の緩慢性、そして容姿へのコンプレックスから独自の世界にこもり、あの『ベルサイユのばら』の世界観を構築されたのです。
もし、そのようなフラストレーションがなければ『ベルサイユのばら』は生み出せなかったと思うんですね。
話がそれてしまいましたが、つまり、ジーンくんには映画製作者としての資格と才能があるということですね。
ポンポさんはそのことを見抜き、ジーンくんをアシスタントに選び『MEISTER』の監督に抜擢したんですよ(≧▽≦)
そして、ジーンくんはポンポさんの期待に応え、最高の映画を作る為に、映画関係者たちと撮影を始めるのです。
その、撮影現場は暖かく笑いに溢れ、アイデアを出し合いながら制作されていて、とても素敵なんですよ。
そんな撮影現場と対照的に、同時進行で描かれる作中映画の『MEISTER』はシリアスで、ギャップが引き立つんですね( *´艸`)
アニメなのに「役者(声優)の演技力スゲ~」って思わされます。
そんな和気あいあいとした撮影も終わり、クランクアップ(映画の撮影が終わること)して、ここからは監督であるジーンくんの孤独な編集作業が始まります。
よく「創作とは孤独との戦い」だと言われます。
大きな映画は一人では作ることができませんが、最後の映画を編集するのは監督なのだそうです。
編集によって映画を活かすことも、殺すこともできる。
つまり映画の出来、不出来は最終的に監督が握っているんですね。
しかも、多くの人々やお金も関わっているので、プレッシャーも半端ではなく、ジーンくんは何日も眠らずに孤独な編集作業に没頭した無理がたたって、倒れてしまうんですね……(^▽^;)
体調管理も仕事のうちだと非難されるされるでしょうが、今までのジーンくんの想いを観ていると、ただ非難することもできません。
ですが、ジーンくんは病院を抜け出し、プロデューサーであるポンポさんに足りないシーンがあるから追加撮影したいことを伝えるのです。
それは解散した映画関係者に再び招集をかけることであり、多大な労力と資金が必要です。
それでもポンポさんはジーンくんに「追加撮影がしたいのか?」「なぜ諦めないんだ」と尋ねます。
そのとき、ジーンくんの心情と作中映画の主人公・音楽家の心情が重なって
音楽家「それでも」
ジーン「僕には」
音楽家「音楽しか」
ジーン「映画しかありません」
音楽家「だから」
ジーン「どうしても」
音楽家「私の音楽に」
ジーン「僕の映画には一つ」
音楽家「あの日のアリアが」
ジーン「足りないシーンがあるんです!」
音楽家「必要なんだ!」
と、交互に映し出されるシーンの演出が最高なんです( ;∀;)
そして、そこからはもう一つのドラマが展開されるんですよ。
このシーンは原作にない映画オリジナルらしく、このシーンがよりこの物語に深みを持たせることに成功したと思います。
かつてジーンくんと同じスクールに通っていたリア充で、映画オリジナルキャラクターのアラン・ガードナーという若手銀行マンがいるのですが、彼は仕事に行き詰まりを感じていて、銀行を退職しようと考えていました。
そんなとき映画追加撮影の融資を願う書類をアランくんは発見し、この案件を自分に任せて欲しいと上司に頼むのです。
このアランくんが実に良いキャラで、例えるならオタクに優しいギャルのような存在なのです。
ここから、アランくんが上司を説得するためにデータをまとめ、あるプレゼンを考えるんですね。
そのプレゼンもドラマティックで感動ものなんです( ;∀;)
本当に演出がすごい。
アランくんの活躍のおかげで、追加撮影する資金をニャリウッド銀行から融資してもらえることになり、作中映画の音楽家の過去が新たに撮影されるんですね。
そのジグソーパズルのピースのようなワンシーンが加わったことで、ジーンくんが思い描く映画は完成し『MEISTER』はアカデミー賞で多くの賞を受賞し、ジーンくんも監督賞を受賞するのです。
この映画は映画制作を通して、創作者・表現者の苦悩だけでなく、仕事人たちのドラマを描くことに成功したと思います。
起承転結の構成に無駄がなく、最後のオチを含めて最高の映画でした(≧▽≦)b