ストーリー
上京した両親を厄介者扱いする子供たち。気落ちする老親を、
一人温かくもてなす義理の娘。家族でも心の距離が遠くなる切なさと、
血の繋がりを超えた純粋な真心…人間関係の奥深さに魂が震える世界映画史上に残る大傑作。
引用元:https://filmarks.com/movies/35498
名匠・小津安二郎の代表作で、東京で暮らす子どもたちを訪ねた老夫婦の姿を通し、戦後日本における家族関係の変化を描いた不朽の名作。ローポジションやカメラの固定といった“小津調”と形容される独自の技法で、親子の関係を丁寧に描き出す。尾道で暮らす老夫婦・周吉ととみは、東京で暮らす子どもたちを訪ねるため久々に上京する。しかし医者の長男・幸一も美容院を営む長女・志げもそれぞれの生活に忙しく、両親を構ってばかりいられない。唯一、戦死した次男の妻・紀子だけが彼らに優しい心遣いを見せるのだった。
1953年製作/135分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1953年11月3日
引用元:https://eiga.com/movie/38069/
登場人物・キャスト
- 平山周吉
- 演 - 笠智衆
- 尾道に妻と次女と共に暮らしている。
- とみ
- 演 - 東山千栄子(俳優座)
- 周吉の妻。
- 紀子
- 演 - 原節子
- 戦死した次男の妻。BG[注 4]として働き、アパートで暮らしている。
- 金子志げ
- 演 - 杉村春子(文学座)
- 周吉の長女。美容院を営む。
- 平山幸一
- 演 - 山村聡
- 周吉の長男。内科・小児科の医院を営む。
- 文子
- 演 - 三宅邦子
- 幸一の妻。
- 京子
- 演 - 香川京子
- 周吉の次女。小学校の教員。
- 沼田三平
- 演 - 東野英治郎(俳優座)
- 周吉の旧友。
- 金子庫造
- 演 - 中村伸郎(文学座)
- 志げの夫。
- 平山敬三
- 演 - 大坂志郎
- 周吉の三男。国鉄に勤務している。
- 服部修
- 演 - 十朱久雄
- 周吉の旧友。
- よね
- 演 - 長岡輝子(文学座)
- 服部の妻。
- おでん屋の女
- 演 - 桜むつ子
- 隣家の細君
- 演 - 高橋豊子
- 周吉の家の隣人。
- 鉄道職員
- 演 - 安部徹
- 敬三の同僚。
- アパートの女
- 演 - 三谷幸子
- 紀子の隣室に住んでいる。
- 平山實
- 演 - 村瀬襌(劇団ちどり)
- 幸一の長男。
- 勇
- 演 - 毛利充宏(劇団若草)
- 幸一の次男。
- 美容院の助手
- 演 - 阿南純子
- 美容院の客
- 演 - 水木涼子、戸川美子
- 下宿の青年
- 演 - 糸川和廣
- 患家の男
- 演 - 遠山文雄
- 巡査
- 演 - 諸角啓二郎
- 会社の課長
- 演 - 新島勉
- 事務員
- 演 - 鈴木彰三
- 旅館の女中
- 演 - 田代芳子、秩父晴子
- 艶歌師
- 演 - 三木隆
- 尾道の医者
- 演 - 長尾敏之助
平山周吉 | 平山とみ (妻) |
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平山幸一 (長男) |
平山文子 (嫁) |
金子庫造 (婿) |
金子志げ (長女) |
平山昌二 (次男) 戦死 |
平山紀子 (嫁) 未亡人 |
平山敬三 (三男 ) |
平山京子 (次女) |
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平山實 (孫) |
平山勇 (孫) |
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括弧内は周吉との続柄 色の凡例: 男 女 |
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/東京物語
感想
上京した両親を厄介者あつかいする子供たち。
気落ちする老親を、一人温かく迎える義理の娘。
家族でも心の距離が遠くなる切なさと、血のつながりを超えた純粋な真心を描き、世界映画史上に遺る傑作となった『東京物語』。
例えるなら山田洋次監督の『家族はつらいよ』や『サザエさん』ような雰囲気があります。
でも『家族はつらいよ』や『サザエさん』がロマン主義だとしたら、本作『東京物語』は現実主義です。
ローポジション、カメラ固定で切り取られる平山一家の関係に温かみはなく、徹底して冷徹なんですね(;^ω^)
「これがリアルか……」とちょっと暗い気持ちになります……。
子供たちに逢うために上京してきた両親ですが、子供たちは仕事や付き合いで忙しく、訪ねてきたばかりの両親を厄介払いをするために熱海に送り出すのです。
多くの人に見に覚えがあるのではないか?と思うんですね。
ありませんか? 友達と遊びたくて、自分の時間が欲しくて、仕事や忙しさにかこつけて、家族などの近しい人と過ごす時間をおざなりにした経験?
たぶんですが、多くの人に身に覚えがあると思うんですよ(^▽^;)
バニラも身に覚えがあり過ぎて「ドキ……」っとしてしまいました。
そうした理由で熱海に送り出された両親ですが……両親は熱海からすぐに帰ってきてしまうのです……。
ですが、子供たちが迷惑がっていることを感じとったらしい両親は、広島県尾道市にある家に帰ることを決め、その帰り道でとみさんが体調を崩し、回復する見込みもなくそのまま亡くなってしまうという「泣きっ面に蜂」「弱り目に祟り目」状態です(^▽^;)
そして、とみさんの葬式を済ませますが、子供たちは「お父さんが先に死んでくれた方がよかった」という話をしながら、形見分けや遺産相続について語り合い、すぐに東京に帰ってしまうのです。
ですが、戦死した次男の嫁の平山紀子だけは、最後まで残された義父のことを心配して、義父の周平も紀子には息子のことは気にせず幸せになって欲しいと東京に送り返すところで物語は終わります。
なんでしょう……鬱映画ではないのでしょうが、視聴後は鬱っぽくなってしまいますね……(^▽^;)
いったい家族とは何なのか? と考えさせられます(´・ω・`)
現代は核家族化などと言われ、家族関係が希薄になっていると言われていますが、昔からある普遍的な問題なんですね。
作中で紀子さんが平山家の次女・京子さんと葬式が済んで語り合うシーンがあります。
京子「でも、よかった。今日までお義姉さんにいていただいて。兄さんも姉さんも、もう少しおってくれてもよかったわ」
紀子「でも皆さんお忙しいのよ」
京子「でも、ずいぶん勝手よ。言いたいことだけゆって、さっさと帰ってしまうんですもの」
紀子「それは、しょうがいないのよ。みんなお仕事があるんだから」
京子「だったら、お義姉さんでもあるじゃありませんか。自分勝手なんよ」
紀子「でもね京子さん……」
京子「うんん。お母さんが亡くなるとすぐ、お形見欲しいだなんて。あたし、お母さんの気持ち考えたら、とても悲しなったわ。他人同士でも、もっと温かいわ。親子ってそんなもんじゃないと思う」
紀子「だけどね、京子さん。あたしもあなたくらいのころはそう思ってたのよ。でも、子供って大きくなると、段々、親から離れて行くものじゃないかしら。お義姉様ぐらいになると、もうお義母様やお義父様とは別の、お義姉様だけの生活っていうものがあるのよ。お義姉様だって、けっして悪気であんなことなさったんじゃないと思うの。誰だってみんな、自分の生活が一番大事になって来るのよ」
京子「そうかしら……。でもあたし、そんな風になりたくない。それじゃあ親子なんてずいぶんつまらない」
紀子「そうね。でも、みんなそうなってくんじゃないかしら。段々、そうなるのよ」
京子「じゃあ、お義姉さんも?」
紀子「ええ、なりたかないけど……やっぱり、そうなってくわよ」
京子「いやね……。世の中って……」
紀子「そう、いやなことばっかり」
紀子さんが言う通り、子供は段々と親から離れて、子供だけの生活というものを持つようになります。
それが当然とわかっていても、そんな世の中のつまらなさを京子さんは嘆いているんですね。
例えば野生動物の世界では、巣立った動物はもう親のもとに戻って来ることはありません。
例え野垂れ死にしようとそれまでですし、子供からしても親が年老いたからと面倒を見ることはありませんよね。
『ジョジョの奇妙な冒険』の我らがディオ様はこんなことをおっしゃっています。
人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる。
名声を手に入れたり、人を支配したり、金もうけをするのも安心するためだ。結婚したり、友人をつくったりするのも安心するためだ。人のために役立つだとか、愛と平和のためだとか、すべては自分を安心させるためだ。安心を求める事こそ、人間の目的だ。
引用元:『ジョジョの奇妙な冒険』
さすがディオ! 俺たちが気づかないことに気付いている! そこに痺れる、憧れる!
というのはおふざけですが、確かに、ディオ様のおっしゃる通り、結婚して子供をつくるのは安心のためでもあると思うんですよね。
老後は子供に面倒を見てもらおうとか、思ったりしている親も少数ですがいると思うのです(^▽^;)
何が言いたいかというと、本作の映画の子供たちは冷たいように感じますが、それが当然で、子供には子供の人生があり、親は見返りを求めるべきではないのかもしれません。
そのつもりなら、子供は面倒をみてくれるでしょうし……みてくれなければそれまでと達観するべきなのかもしれません……。
でも、人間は野生動物ではないので、それでいいのか? とも思います。
バニラもまだ紀子さんのように達観できていないので、京子さんの「親子ってそんなもんじゃないと思う」の意見なんですよね(^▽^;)
そんな世の中の理が、リアリズムたっぷりに描かれた名作であることは間違いありません( ̄▽ ̄)ゝ