ゆる文

ゆる~くアニメだとか、映画の感想文

映画 SF/スリラー『ザ・セル』「怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」

引用元:Filmarks

 人間を含む生物には無意識という、意識に上らない意識というものが存在していることを発見したのは、精神分析学の基礎を築いたフロイトです。フロイトは、子供の性発達段階には口唇期、肛門期、男根期、潜在期、性器期という5つの発達段階があり、その期間ごとに性的発達が複雑に絡み合い成長すると精神性発達理論幼児性欲理論などで提唱しました。

 現代ではフロイトの説には信憑性がないなどと軽視されることがあるそうですが、すべてを否定することはできないと思います(`・ω・´) 人間を含むすべての動物を動機付けするのは快楽ですよね。その快楽を生み出しているのは脳内物質であるドーパミンだとされています。ドーパミン分泌の実験で有名なのは、ネズミの脳の側坐核と呼ばれる個所に電極を差し込んで、レバーを押させるという実験でしょう。脳の側坐核を刺激すると、ドーパミンが分泌され、ネズミは食事も睡眠も忘れて、レバーを押し続けたらしいです(´-ω-`)

 

 この実験でわかるのは、生物はドーパミンによる快楽によって動機付けされているということです( ̄▽ ̄) 生きる上でなくなてならない物質ですが、様々な依存症や苦しみの原因にもなる物質でもあります……(~_~;) 極端に言ってしまえば、すべての生物はDNAによってプログラムされたドーパミンによって操られているわけですね( ̄▽ ̄) 人間には自由意思など存在していないと現代の脳科学などでは定説になっていて、すべては脳のゆらぎによる無意識の選択で、人間は自分の行動理由を後から説明しているだけなのです。

 

 その話と、フロイトの精神性発達理論に何の関係があるかといいますと、大人でも子供でも快感がないと行動しないということです。赤ちゃんの場合、母親の母乳などを飲まないといけないので口唇からの快楽が強く、成長していくに従い、肛門や男根、性器などへの刺激への快感が強くなるから、老若男女ほぼ問わず利己的な遺伝子を遺すために性行為に取り組むわけです( ̄▽ ̄)

 

 そして、この映画『ザ・セル』は人間の無意識を扱った初の映画ではないでしょうか(初かどうかは知らんけど(。´・ω・)?)。先進的な医療施設キャンベルセンターで働く小児精神科医キャサリンは人間の内面世界、つまり心の中に入れる特殊な技術を使い、昏睡状態の子供たちの心に入り対話を試みていました。そんなある日、女性ばかりを殺し、殺した女性を漂白剤に浸けて脱色した後、人形のようにしてしまうという猟奇連続殺人犯のカール・スターガーがセンターに運び込まれて来ます。

 

 カールは意識を失う前に新たな女性を、少しずつ水が溜まる仕組みの水槽の中に閉じ込めており、その女性を監禁している場所を聞き出すために心にダイブできるキャサリンに白羽の矢が立ったのです。キャサリンは女性を救うためにカールの精神世界にダイブしますが、そこは今まで観たこともない悪夢のような精神世界だったのです(;´Д`) 馬が輪切りされたり、漂白された女性が展示されていたり、サタンのような悪魔?がその世界を支配していたり、文章では表現しきれません……(;´・ω・)

 

 カールはどうしてそんな精神世界を構築してしまったのか? 物語が進むにつれて、少しづつ明らかにされます(´-ω-`) カールは複雑な家庭で育ち、幼い頃父親から虐待されていたらしいのです……(>_<) 親からの愛情をもらえなかったとか、虐待されていた人みんながみんな犯罪を犯すわけではないということは留意しなければなりませんが、ある実験では反社会的なことを犯す確率は、幼少期に虐待や複雑な環境で育った人と、そうでない人では、やはり虐待を受けた人の方が高くなるのは確かなようです……(~_~;) 

 

 そのような場合事件などが起きると、誰が悪いんだって話になりますよね……。その父親だって、幼少のころ複雑な環境で育ったかもしれないし、その父親の親だって、その親の親だって……。心の痛くなる話ですが、「親の不幸は子の不幸」……になってしまう確率は高いです(>_<) 不幸は連鎖します……。じゃあ結局、誰に責任の所在があるのか? 「どこから間違えてしまったのか?」を辿って行くと、じゃあ「生まれない方がいいじゃん」という反出生主義が最適解になりますよね(・ω・)

 

 大乗仏教では教えが捻じ曲げられていますが、元始仏教では反出生こそが解脱であり、救いだというようなことが説かれています。輪廻転生って仏教思想にはあるじゃないですか。生物は「天道」「人道」「畜生道」「餓鬼道」「地獄道」の六つの四苦八苦の絶えない世界を輪廻転生していて、その苦しみから解放(解脱)する方法は悟りを開くことだとされています。仏教徒たちは悟りを開くために、日々厳しい修行に耐えているわけです。

 

 バニラは輪廻転生しているものはDNAだと考えます。そう考えると、科学的にも説明がつくのですよ。つまり悟りにもいくつかありますが、一つの反生殖であり、古代から脈々と続く自分のDNAを途絶えさせることが本当の解脱だというふうに解釈しています。信じるか信じないかはあなた次第です! と、話しがそれましたが、カールは複雑な幼少時代を経て、精神分離症、今でいう統合失調症のような精神病になってしまいました(病気のかなりは遺伝するので、複雑な家庭環境も原因ではあるでしょうけど、スターガー家のDNAにも問題因子があった可能性も高いと思いますが)。

 

 なんとかキャサリンはカール(善)と対話を試みますが、カール(悪)が妨害してきます。カールの精神世界のいたるところにメタファー的と思われるものが散りばめられていて、カールの精神分析を行う上でかなりのヒントになりそうです。そして、この世の地獄で苦しむカールを救うことはできるのか……? 22年前の作品ですが、今なお時代の先を行くSF映画だと思いました――(≧▽≦)