ストーリー
ルネ・クレマン監督が1952年に手がけ、同年のベネチア国際映画祭で金獅子賞、アカデミー賞で名誉賞(後の外国語映画賞)などに輝いた、映画史上の不朽の名作。ナルシソ・イエペスのギター演奏による主題曲「愛のロマンス」の哀愁に満ちた旋律も広く知られる。第2次世界大戦中のフランス。ドイツ軍によるパリ侵攻から逃れる途中、爆撃により両親と愛犬を亡くした5歳の少女ポーレットは、ひとりさまよううちに11歳の農民の少年ミシェルと出会う。ミシェルから死んだものは土に埋め、お墓を作ることを教わったポーレットは、子犬を埋め、十字架を供える。これをきっかけに、お墓を作って十字架を供える遊びに夢中になった2人は、教会や霊柩車からも十字架を持ち出してしまうが……。日本では53年に初公開。2018年9月、デジタルリマスター版でリバイバル公開(パンドラ配給)。2020年8月には、人気声優による名画吹き替えプロジェクト「NEW ERA MOVIES」で新たに制作された吹き替え版(ポーレット役=戸松遥/ミシェル・ドレ役=小松未可子、ジョゼフ・ドレ役=稲田徹)で公開される(モービー・ディック配給)。
1952年製作/87分/G/フランス
原題:Jeux interdits
配給:モービー・ディック
劇場公開日:2020年8月14日
その他の公開日:1953年9月6日(日本初公開)、2018年9月1
引用元:https://eiga.com/movie/43902/
登場人物・キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹替 | |||
---|---|---|---|---|---|
TBS版 | 日本テレビ版 | テレビ朝日版[2] | N.E.M.版[3] | ||
ポーレット | ブリジット・フォッセー | 橘和香 | 佐藤久里子 | 冨永みーな | 戸松遥 |
ミシェル・ドレ | ジョルジュ・プージュリー | 水野哲 | 岡村悦明 | 小松未可子 | |
ジョゼフ・ドレ(ミシェルの父) | リュシアン・ユベール | 桑山正一 | 名古屋章 | 増岡弘 | 稲田徹 |
ミシェルの母 | シュザンヌ・クールタル | 田代信子 | 野中マリ子 | 森本73子 | |
ジョルジュ・ドレ(ミシェルの長兄) | ジャック・マラン | 水鳥鉄夫 | 園田裕久 | 野津山幸宏 | |
ベルト・ドレ(ミシェルの姉) | ロランス・バディ | 清水文子 | 吉田理保子 | 前田玲奈 | |
フランシス・グアール(ベルトの恋人) | アメデ | 坂部文昭 | 富山敬 | 谷口悠 | |
司祭 | ルイ・サンテーブ | 太宰久雄 | 浮田左武郎 | 山中誠也 | |
レイモン・ドレ(ミシェルの次兄) | ピエール・メロヴェ | 亀谷雅彦 | 虎島貴明 | ||
グアール氏(フランシスの父) | アンドレ・ワスリー | 大久保正信 | 小瀬格 | 野坂尚也 | |
不明 その他 |
大久保正信 坂部文昭 三枝みち子 熊倉重之 |
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/禁じられた遊び
感想
ベネチア国際映画祭で金獅子賞と、アカデミー賞で名誉賞(後の外国語映画賞)などに輝いた、映画史上に遺る不屈の名作『禁じられた遊び』
タイトルを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
文学的で神聖さすら感じる、素晴らしいタイトルですよね(≧▽≦)
創作者あるあるだと思いますが、小説や漫画などを描くときに先にタイトルを思いついて、そのタイトルを使いたいために物語を構築するタイプの人っているんですよ。
それと同様、本作『禁じられた遊び』はタイトルから着想を得て制作されたのか? と思うほどストーリーとタイトルが合っているんです。
ですが、この手の作品ではタイトルは素晴らしいけど、ストーリーはいまいちということも多いですが、本作は時の洗礼を乗り越えたのは伊達ではなく、ストーリーの方も素晴らしく、非の打ち所がない映画なんですね( ̄▽ ̄)
ストーリーは昔の作品ということもあり、現代のロマン主義的で劇的なエンターテイメント映画ではなく、まるで『東京物語』のように冷徹なまでにリアリティのあるリアリズム的な作品なのです。
が、その淡々としたリアリズムが、まるで聖書の中の物語を垣間見ているような神聖さ感じさせるのです。
舞台は第二次世界大戦時のフランス。
ポーレットという5歳の少女は、ドイツ軍の空襲に遭い両親と愛犬と共に避難していました。
ですが、その最中に犬が逃げ出してしまい、犬を追ってポーレットは駆け出していくのです。
両親はポーレットを追いかけて捕まえますが、そのときドイツ軍の機銃掃射に遭い、ポーレットは愛犬と両親を一度に失ってしまうのでした……。
この場面が凄くて「これ本当に演技か……?」と思うほど、すべてがリアルに感じるんですよ(; ・`д・´)
まず、犬が痙攣している……。
え……え……え……いくらなんでも犬にあんな演技できる……?
もしかすると、撮影のために本当に犬を殺してない? と恐ろしくなりました……。
まさかね……まさか……(-_-;)
そして続けて、ポーレットが亡くなった両親の顔を覗き込んで、頬に指を這わせるシーン……があるのですが、演技と思えないほど自然で、言葉では表せない様々なことを視聴者に訴えかけて来るのです……!
自分が幼稚園くらいのときを鑑みても、5歳の子供にも死という概念はわかるでしょうが、概念はわかっていても実感としては捉えられないなかったと思うのです。
ポーレットは両親を目の前で殺されてしまうのですが、それほどショックを受けているようには描かれないんですよ……。
実際のところはわからないですよ、わからないですが実際に5歳くらいの子供が両親を目の前で殺されたら、ああなるんじゃないか? っていうリアリティがあるんですね……。
そして、ポーレットは犬の死体を持って、彷徨っているとある夫婦に助けられますが、その助けてくれた夫人が、ポーレットの抱えていた犬の死体をごみのように川に捨ててしまいます。
この時代、いかに命というものが脆く儚く軽いものであるかが実感できる、残酷ゆえに素晴らしいシーンだと思います。
話しはそれますが、岩明均さんの『寄生獣』という漫画の中で、主人公の泉 新一がパラサイトであるミギーに寄生されて、心まで冷徹なパラサイトに近づいていくという描写の中で、亡くなった犬を「死んだイヌはイヌじゃない、犬の形をした肉だ」と、ゴミ箱に捨てるエピソードがあるんですね。
確かにそうでしょうけど、人間の心はそう簡単に割り切れませんよね。
けれど、それは現代に生きている我々だから思うことで、命の尊さというのは時代によって変わってしまうものなのです。
歴史を見ても昔は今以上に死が身近で、戦争、飢饉、疫病などで簡単に人が死んだ時代ですし、例えばヴァイキングなどは、戦士として死んだらヴァルハラ(戦士の天国のような場所)に行けると本気で信じていたので、死を恐れていなかったそうなのです。
何が言いたいかというと、現代の我々が犬の形をした肉であろうとも、ごみ箱に捨てられないのは、そのように教えられているからということです。
ですが、ポーレットを助けた夫人は、犬の死体をごみのようにあっさりと捨ててしまうのです。
そのように、現実的に合理的に割り切らないと生きていけなかった時代ということですね。
一瞬の描写ですが、第二次世界大戦中の死生観がよくあらわされた素晴らしいシーンであると思ったのです。
そしてポーレットは捨てられた犬を追いかけて、川沿いを再び彷徨っていると、逃げ出した牛を追いかけて来た、ミシェル・ドレという少年と出会い、ミシェルの家に保護されることになるのです。
ここからが本作のテーマになっていくのですが、ポーレットはミシェルから死んだものは、土に埋めてお墓を作るということを教わり、ポーレットは愛犬の墓を作ろうとするのです。
が、一匹だけでは可哀そうと思うようになり、ポーレットとミシェルは死んだ動物を一緒に埋めてやるために探し始めるんですよ。
この「墓を作って遊ぶ」というのがタイトルにもなっている『禁じられた遊び』なのです。
生き物の墓を作って遊ぶことは確かによくないことですが、子供たちは遊びだとは思っていないんですよね。
純真無垢ゆえの行いってあるでしょ。
例えば、蟻を面白半分に踏みつぶしたり、そういうことと似ていると思うんですよね。
純真無垢ゆえに、恐ろしくもありますが……。
ポーレットとミシェルくらいの年齢ではまだ善悪の判断ができませんから、何をしでかすかわからない怖さがあるんですよね……(^▽^;)
そしてここから、少し不吉な雰囲気が漂い始めて、もしかするとポーレットかミシェルが、墓に埋めるために動物を殺すんじゃないか……という展開になりはしないかとハラハラしてしまいます(^▽^;)
ですが、そんな心配は杞憂でポーレットはミシェルがゴキブリを殺したとき、「殺しちゃだめ!」と止めているんですよ。
あくまでも、死んだ動物を埋葬するのであって、殺して埋葬する動物をつくるわけではないんですね。
ここまでだったら、まだポーレットとミシェル二人だけの間で行われていた問題だったのですが、ミシェルがポーレットのために十字架を盗んだことで、大人たちの間でも騒ぎが起こってしまいます。
ミシェルはポーレットのために十字架のありかを隠し通し、ポーレットはその様子を見て泣いてしまうのです。
果たして、ポーレットとミシェルの禁じられた遊びの結末はいかに?
ラストだけ言えば、バニラの観た映画の中で一番と言えます(≧▽≦)ゝ