ストーリー
「もうすぐ死ぬ」と家族に伝えるために、12年ぶりに帰郷する人気劇作家のルイ(ギャスパー・ウリエル)。母のマルティーヌ(ナタリー・バイ)は息子の好きな料理を用意し、幼い頃に別れた兄を覚えていない妹のシュザンヌ(レア・セドゥ)は慣れないオシャレをして待っていた。浮足立つ二人と違って、素っ気なく迎える兄のアントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)、彼の妻のカトリーヌ(マリオン・コティヤール)はルイとは初対面だ。オードブルにメインとぎこちない会話が続き、デザートには打ち明けようと決意するルイ。だが、兄の激しい言葉を合図に、それぞれが隠していた思わぬ感情がほとばしる─。
引用元:https://filmarks.com/movies/62460
「Mommy マミー」「わたしはロランス」などで高い評価を受けるカナダの若手監督グザビエ・ドランが、「エディット・ピアフ 愛の讃歌」のマリオン・コティヤール、「アデル、ブルーは熱い色」のレア・セドゥ、「ハンニバル・ライジング」のギャスパー・ウリエルらフランス映画界を代表する実力派キャスト共演で撮りあげた人間ドラマ。劇作家ジャン=リュック・ラガルスの舞台劇「まさに世界の終わり」を原作に、自分の死期が近いことを伝えるため12年ぶりに帰郷した若手作家の苦悩と家族の葛藤や愛を描き、第69回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた。若手作家のルイは自分がもうすぐ死ぬことを知らせるため、長らく疎遠にしていた母や兄夫婦、妹が暮らす故郷へ帰ってくる。しかし家族と他愛のない会話を交わすうちに、告白するタイミングを失ってしまい……。
2016年製作/99分/PG12/カナダ・フランス合作
原題:Juste la fin du monde
配給:ギャガ
劇場公開日:2017年2月11日
引用元:https://eiga.com/movie/84621/
登場人物・キャスト
- ナタリー・バイ - マルティーヌ
- ヴァンサン・カッセル - アントワーヌ
- マリオン・コティヤール - カトリーヌ
- レア・セドゥ - シュザンヌ
- ギャスパー・ウリエル - ルイ
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/たかが世界の終わり
感想
都会で活躍する人気劇作家のルイは
死期が近いことを伝えるために、12年ぶりに故郷に帰ることになるが……家族はみんな不器用な上に、12年の壁は厚く、ルイも家族もどう接すればいいのかわからなかった……。
このぎこちなさがとてもリアルで観ていて苦しくなるほどなんですね(^▽^;)
母のマルティーヌはどうにか空白の時間を埋め合わせるために立ちまわるのですが、ルイの兄のアンドワーヌは、才能豊かなルイにコンプレックスを抱いているようで、ことあるごとに嫌味のようなことをチクチクいい、妹のシュザンヌは幼いころにルイが出て行ったために面識がなく、ルイ本人も何故か家族と壁を感じているようなんですね……。
みんな不器用……(^▽^;)
このルイたちのように不器用なために、家族関係が上手くいかない人は意外と多いと思うのです。
ただ『不幸には人に誇れる不幸と、人に誇れない不幸がある』というか……例えば、家族みんないい人で良くしてくれるけど、一緒にいるのが辛いということもあると思いますが、この何にもないけど、上手くいかないというのは共感が得られにくく、逆に人に話ずらいんですよね……。
でも、実際にはこのルイたちのような不器用な家族の方が世の中には多いと思うのです。
この映画は、そんな物語にしづらい絶妙な関係性を、物語にしていて「あるある!」と共感できならがらも、凡俗化するどころか、芸術性がとても高い映画になっているんですね( ̄▽ ̄)
そのわけかどうかはわかりませんが、本作『たかが世界の終わり』は聖書の「放蕩息子のたとえ話」がモチーフになっていると『ciatr』のサイトに書かれていました。
「放蕩息子のたとえ話」の内容は、父親から財産の生前贈与を受けた二人の兄弟がおり、兄は父親のもとに残り商売の手伝いをしますが、弟は父親のもとを去ってしまいます。
それから数年後、家を出て行った弟が財産を使い切り生活に困り果てて家に帰って来ますが、兄はいい気持ちはしません。
当然ですよね、弟は家族を捨てて放蕩していたのに、金を使いきったら助けを求めて戻って来るのですから(^▽^;)
ですが、父親は「お前はいつも私とともにいる。私のものはすべてお前のものだ。しかし、おまえの弟は死んでいたのに、生き返った。いなくなっていたのに見つかったのだ。宴を開いて歓迎するのが当然だ」といい、弟を迎え入れるという話です。
この話は父親を神、兄を敬虔な信者、弟は一度信仰を捨てたが再び戻って来た迷える子羊のメタファーとなっていますが、本作『たかが世界の終わり』では、弟を再び迎え入れてくれる父親が不在であり、兄は怒りを抑えることができずに弟を再び追い返してしまうという、神の不在を描いた作品なっています。
ただの不器用な家族の物語だと思っていたら、モチーフが聖書というだけで神聖な作品に感じられる不思議( *´艸`)
ストーリー構成はいたくシンプルで、ルイが12年ぶりに家族と逢うというだけの物語で、それをそのまま描くと陳腐で凡庸な作品になると思いますが、本作はただそれだけの話が、構図と演出、役者たちの影のある演技により、まるで太宰治のような文学的芸術に昇華されています(≧▽≦)
これが監督の仕事なのか……と監督の重要性を改めに感じることができる作品でしょう(≧▽≦)ゝ