ストーリー
トルコ発フランス行きのオリエント急行でくつろぐ名探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)に話しかけてきた、アメリカ人富豪のラチェット(ジョニー・デップ)。脅迫を受けているという彼は、ポアロに身辺の警護を頼む。しかし、ポアロはラチェットの要請をあっさりと断るのだった。 深夜、オリエント急行は脱線事故を起こし、山腹の高架橋で立ち往する。そしてその車内でラチェットが刺殺体の状態で見つかる。 鉄道会社から捜査を頼まれたポアロは、密室殺人事件の解明に挑む。共通点のない13人の容疑者の中に、果たして犯人はいるのだろうか…….。
引用元:https://filmaga.filmarks.com/articles/70643/
1974年にも映画化されたアガサ・クリスティの名作ミステリーをケネス・ブラナーの製作・監督・主演、ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファーら豪華キャストの共演で新たに映画化。トルコ発フランス行きの寝台列車オリエント急行で、富豪ラチェットが刺殺された。教授、執事、伯爵、伯爵夫人、秘書、家庭教師、宣教師、未亡人、セールスマン、メイド、医者、公爵夫人という目的地以外は共通点のない乗客たちと車掌をあわせた13人が、殺人事件の容疑者となってしまう。そして、この列車に乗り合わせていた世界一の探偵エルキュール・ポアロは、列車内という動く密室で起こった事件の解決に挑む。主人公の名探偵ポアロ役をブラナー、事件の被害者ラチェット役をデップ、未亡人役をファイファーが演じるほか、教授役にウィレム・デフォー、家庭教師役にデイジー・リドリー、公爵夫人役にジュディ・デンチ、宣教師役にペネロペ・クルスが配されている。
引用元:https://eiga.com/movie/86304/
登場人物・キャスト
ロンドン行きのオリエント急行に乗車したベルギーの名探偵。
被害者
ラチェット/ジョニー・デップ
脅迫状が届いたことにより、命の危機を感じているアメリカ人の富豪美術商。
容疑者
ハバード夫人/ミシェル・ファイファー
ラチェットの隣室で、深夜に部屋に男がいたと証言したアメリカ人。
ドラゴミロフ公爵夫人/ジュディ・デンチ
愛犬を連れて列車に乗り込んだロシアの貴族。
ピラール・エストラバドス/ペネロペ・クルス
かつては乳母の仕事をしていた宣教師。
メアリ・デブナム/デイジー・リドリー
アーバスノットと親しい人物。バグダッドで家庭教師をしていた。
ゲアハルト・ハードマン/ウィレム・デフォー
人種差別発言が多いオーストラリア人の教授。
エレナ・アンドレニ伯爵夫人/ルーシー・ボイントン
年が若く、誰もが美しさを認める美人。体調を崩して薬を服用している。
ドクター・アーバスノット/レスリー・オドム・Jr
ラチェットの遺体を調べ、死亡時刻を推測する医師。
エドワード・マスターマン/デレク・ジャコビ
ラチェットの執事で病により寿命が短いと宣告されている。
ピエール・ミシェル/マーワン・ケンザリ
オリエント急行の車掌。
ヒルデガルデ・シュミット/オリヴィア・コールマン
公爵夫人のメイド。
マルケス/マヌエル・ガルシア=ルルフォ
自動車販売で成功しているが、キューバで脱獄し、アメリカへ渡ってきた過去がある。
ヘクター・マックイーン/ジョシュ・ギャッド
アルコール依存症。ラチェットの秘書で帳簿を管理している。
ルドルフ・アンドレニ伯爵/セルゲイ・ポールニン
有能なダンサーでもあるハンガリーの貴族。
鉄道会社
ブーク/トム・ベイトマン
オリエント急行を運営している鉄道会社の重役。
引用元:https://filmaga.filmarks.com/articles/70643/
感想
トルコ発フランス行きのオリエント急行に乗り合わせた世界的名探偵エルキュール・ポアロ。
そんなポアロの下に脅迫状が届いたという富豪美術商のラチェットが警護を頼んで来るのだが、ポアロはきっぱりと断ってしまう。
「名探偵=死神」というのは世界共通認識ですから、当然ポアロの行くところ、行くところ殺人事件が起きてしまうのです( ̄▽ ̄)
ラチェットの頼みを断った夜、雪崩によって脱線事故を起こしたオリエント急行内で、ラチェットは何者かに殺されてしまうのでした……(゚Д゚;)
まあ、死亡フラグ立ちまくってたから、わかってましたけどね(^▽^;)
周囲を雪山に囲まれ、外部との行き来を断たれ、オリエント急行内に閉じ込められた13人の中に犯人いる。
この難事件に世界的名探偵ポワロが挑む! という話です。
バニラは原作小説も1974年版の『オリエント急行殺人事件』も観ていない初視聴の状態で観ましたが、さすがミステリーの女王アガサ博士です。
斬新な犯人とトリックには衝撃を受けました(´艸`*)
アガサ・クリスティーの何がすごいってアイデアですよね。
画期的なトリックをいくつも編み出しています。
ノックスの十戒・ヴァン・ダインの二十則
古典ミステリの世界には、ミステリ小説を書く際のルールというものが存在していてそれが『ノックスの十戒』と『ヴァン・ダインの二十則』というものなんですよ。
ノックスの十戒とは以下の通りです。
- 犯人は、物語の当初に登場していなければならない。ただしその心の動きが読者に読みとれている人物であってはならない。
- 探偵方法に、超自然能力を用いてはならない。
- 犯行現場に、秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない(一つ以上、とするのは誤訳)。
- 未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない。
- 主要人物として「中国人」を登場させてはならない。
- 探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない。
- 変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない。
- 探偵は、読者に提示していない手がかりによって解決してはならない。
- サイドキック[注 2]は、自分の判断を全て読者に知らせねばならない。また、その知能は、一般読者よりもごくわずかに低くなければならない。
- 双子・一人二役は、予め読者に知らされなければならない。
そしてヴァン・ダインの二十則は以下の通りです。
- ★事件の謎を解く手がかりは、全て明白に記述されていなくてはならない。
- 作中の人物が仕掛けるトリック以外に、作者が読者をペテンにかけるような記述をしてはいけない。
- 不必要なラブロマンスを付け加えて知的な物語の展開を混乱させてはいけない。ミステリーの課題は、あくまで犯人を正義の庭に引き出す事であり、恋に悩む男女を結婚の祭壇に導くことではない。
- ★探偵自身、あるいは捜査員の一人が突然犯人に急変してはいけない。これは恥知らずのペテンである。
- ★論理的な推理によって犯人を決定しなければならない。偶然や暗合、動機のない自供によって事件を解決してはいけない。
- 探偵小説には、必ず探偵役が登場して、その人物の捜査と一貫した推理によって事件を解決しなければならない。
- 長編小説には死体が絶対に必要である。殺人より軽い犯罪では読者の興味を持続できない。
- ★占いや心霊術、読心術などで犯罪の真相を告げてはならない。
- 探偵役は一人が望ましい。ひとつの事件に複数の探偵が協力し合って解決するのは推理の脈絡を分断するばかりでなく、読者に対して公平を欠く。それはまるで読者をリレーチームと競争させるようなものである。
- 犯人は物語の中で重要な役を演ずる人物でなくてはならない。最後の章でひょっこり登場した人物に罪を着せるのは、その作者の無能を告白するようなものである。
- 端役の使用人等を犯人にするのは安易な解決策である。その程度の人物が犯す犯罪ならわざわざ本に書くほどの事はない。
- いくつ殺人事件があっても、真の犯人は一人でなければならない。但し端役の共犯者がいてもよい。
- 冒険小説やスパイ小説なら構わないが、探偵小説では秘密結社やマフィアなどの組織に属する人物を犯人にしてはいけない。彼らは非合法な組織の保護を受けられるのでアンフェアである。
- ★殺人の方法と、それを探偵する手段は合理的で、しかも科学的であること。空想科学的であってはいけない。例えば毒殺の場合なら、未知の毒物を使ってはいけない。
- ★事件の真相を説く手がかりは、最後の章で探偵が犯人を指摘する前に、作者がスポーツマンシップと誠実さをもって、全て読者に提示しておかなければならない。
- 余計な情景描写や、脇道に逸れた文学的な饒舌は省くべきである。
- プロの犯罪者を犯人にするのは避けること。それらは警察が日ごろ取り扱う仕事である。真に魅力ある犯罪はアマチュアによって行われる。
- 事件の真相を事故死や自殺で片付けてはいけない。こんな竜頭蛇尾は読者をペテンにかけるものだ。
- 犯罪の動機は個人的なものが良い。国際的な陰謀や政治的な動機はスパイ小説に属する。
- 自尊心(プライド)のある作家なら、次のような手法は避けるべきである。これらは既に使い古された陳腐なものである。
ノックスの十戒とヴァン・ダインの二十則を踏まえたミステリ小説が本格ミステリと言われていました。
当時のミステリ作家たちは、ノックス十戒とヴァン・ダインの二十則を守って、ミステリを書いていたわけです。
でも、ノックスの十戒とヴァン・ダインの二十則は作者と読者がフェアの関係を作るのに大切なことですが、縛り過ぎると様々な可能性を潰してしまう結果にもなります。
そこで、アガサ博士はノックスの十戒やヴァン・ダインの二十則のルールには縛られない変格ミステリというジャンルを確立するのです(≧▽≦)
つまりアガサ博士のすごいところは、当時の社会にあったミステリのルールに捕らわれずに、変格ミステリを確立したところにあると思うのです。
だからアガサ博士の作品には読者の予想を裏切る展開が多いから、信用できません(´艸`*)
本作『オリエント急行殺人事件』もまさにそれでした。
フェアと問われれば、フェアではないかもしれませんが、これでこそアガサ・クリスティーだと思える作品です(`・ω・´)b