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映画 歴史/ドラマ『善き人のためのソナタ』「”感謝を込めて HGW XX7に捧げる”」

引用元:Amazon

 1984年、冷戦の象徴として東西に分断されたドイツ・ベルリン。ソビエト連邦(通称:ソ連支配下の東ベルリンでは西ドイツに逃亡を画策する者が後を絶たなかった。日夜、逃亡者を捕らえるため、東ベルリンには国家保安省・秘密警察(シュタージ)が目を光らせていた。

 

 そんなシュタージのベテラン尋問官ゲルト・ヴィースラー大尉

引用元:映画『善き人のためのソナタ

は、ブルート・ハムプフ大臣に嫌疑をかけられた劇作家ゲオルク・ドライマンと恋人の舞台女優クリスタ=マリア・ジーラントの私生活を盗聴する任務に就く。

引用元:映画『善き人のためのソナタ

 当初ロボットのように感情の無かったゲルト大尉だが、ゲオルクとクリスタの盗聴を続けるうちに、冷徹だったゲルト大尉の心に変化が訪れる。ゲルト大尉はゲオルクが西ドイツに逃亡を手助けしている実行者であることを知っても、証拠を隠蔽しゲオルクとクリスタを助けるのだった。

 

 だが、クリスタはシュタージに捕まり、尋問の末ゲオルクが実行者である証拠のタイプライターの隠し場所を吐いてしまう。ゲオルクの絶体絶命の危機にゲルト大尉は、ゲオルクの部屋に侵入しタイプライターを移動させることで助けるのだった――。

 

 という、ストーリーです。いや~、めっちゃいい映画でした(≧▽≦) バニラの中では『シンドラーのリスト』に匹敵する良い映画だと思いました。本当です。説明するまでもありませんが、近代史は資本主義陣営と共産主義陣営の戦いで幕を開けました。

 

 第一次、第二次世界大戦はナチズム・ファシズムの脅威に対抗するために行われましたが、大戦が終了して新たな脅威になったのが共産主義だったのです。共産主義とは資本主義の欠点を克服するべく、マルクスエンゲルスが主張した最高の社会概念であり、簡単に説明すると、「労働力・生産力・社会インフラなどすべてを国家が管理し、平等に分配する」というものです。

 

 共産主義に至るまでに準備段階として社会主義という社会が実践に移され、それが、ソ連や中国ですね。その社会主義共産主義の予備知識を踏まえた上で、現在の世界を動かしているのは、第二次世界大戦でナチズム・ファシズムに勝利した国際連合(連合国)ですよね。

 

 国際連合にはアメリカをはじめ、中国、フランス、イギリス、そしてソ連が名を連ねます。国際連合の国々は敗戦国である、日本をはじめ本作の舞台であるドイツを分割統治することになりました。 

引用元:ドイツニュースダイジェスト

 ですが、紛らわしいことに、首都であるベルリンは上の図を観てもらえればわかりますが、イギリス、フランス、アメリカ、ソ連と四大国が分割統治することになったんですよ(^▽^;)

 

 イギリス、フランス、アメリカは資本主義陣営であり、ソ連社会主義陣営だったもので、東西を分割するようにベルリンの壁を建設してしまったのですね。で、ソ連統治下の東ベルリンの人々は無謀な社会主義支配に嫌気が差して、西に亡命する人が後を絶ちませんでした(^▽^;)

 

 このベルリンの壁は様々なドラマを生んでいるので、題材には事欠きません。本作のように東ベルリンの人々を西ベルリンに逃亡する手助けをする人々と、それを阻止するシュタージの人々の水面下での戦いが繰り広げられていたのです。

 

 ここからはネタバレになりますが、ラストがとってもいいんですよ(≧▽≦) 映画史に残る屈指のラストだといっても過言ではないくらいです。最後、ベルリンの壁が崩壊し、シュタージたちが解散して、ゲオルク監視の命令を出したブルーノ・ハムプフ大臣が、ゲオルクに盗聴していたことを打ち明けるのです。

 

 当然、ゲオルクは盗聴されてることを知らなかったので、シュタージの無能っぷりを散々笑っていたのですから驚きです。そりゃそうです、盗聴されていたのならどうして、もっと早くシュタージたちが自分を逮捕しなかったのかわからないからです。

 

 ゲオルクは東西分断時代の資料館に向かい、自分の盗聴報告書資料を調べるんですね。すると、その報告書には嘘が書かれていました。受付の人にこの報告書を書いたのが誰かと尋ねると、HGW XX7という男の写真を見せられました。

 

 ゲオルクはクリスタがある理由で亡くなってから、本を書くことを辞めていましたが、それから2年後『善き人のためのソナタ』という一冊の本を書くのです。この「善き人のためのソナタ」というのは、ベートーヴェンピアノソナタ第23番『情熱』のことであり、作中でゲオルクがこんなことを言っています。

引用元:映画『善き人のためのソナタ

レーニンベートーヴェンの”情熱ソナタ”を批判した。これを聴くと、革命が達成できない。この曲を聴いた者は――本気で聴いた者は――悪人になれない」

 

 ゲルト大尉はゲオルクの演奏する情熱ソナタを盗聴で聴き、一筋の涙を流すシーンがあるのです。恐らく、ゲルトはこの瞬間から心変わりしたのだと思います(´-ω-`)

 

 そして、すべてが終わった後、本屋の店先でゲルトはゲオルクの書いた『善き人のためのソナタ』を見つけ、本をめくると扉に「”感謝を込めて HGW XX7に捧げる”」と書いていたのです( ;∀;)

 

 その、言葉を見たときのゲルトの様々な感情が表現された顔といったら(T_T)

引用元:映画『善き人のためのソナタ

 その言葉を見て、ゲルトはレジに向かいます。店員に「ギフト包装は」と聞かれたゲルトは首をゆっくり振り、「いや、私のための本だ」と言って幕を閉じるんですよ(T_T) 素晴らし過ぎるラストです!

 

 店員からしたら、ただの自分が読むための本だと思うでしょうけれど、ゲルトのいうようにゲオルクが感謝を込めて書いたゲルトのための「私のための本」なのですから。見せ方が巧いですよね。本当にいい映画でした('◇')ゞ

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