ストーリー
「三度目の殺人」「海街diary」の是枝裕和監督が、家族ぐるみで軽犯罪を重ねる一家の姿を通して、人と人とのつながりを描いたヒューマンドラマ。2018年・第71回カンヌ国際映画祭で、日本映画としては1997年の「うなぎ」以来21年ぶりとなる最高賞のパルムドールを受賞したほか、第91回アカデミー賞では日本映画では10年ぶりとなる外国語映画賞ノミネートを果たすなど、海外でも高い評価を獲得。第42回日本アカデミー賞では最優秀作品賞を含む8部門で最優秀賞を受賞した。東京の下町。高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、家主である初枝の年金を目当てに、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしていた。彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという、社会の底辺にいるような一家だったが、いつも笑いが絶えない日々を送っている。そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることに。そして、ある事件をきっかけに仲の良かった家族はバラバラになっていき、それぞれが抱える秘密や願いが明らかになっていく。息子とともに万引きを繰り返す父親・治にリリー・フランキー、初枝役に樹木希林と是枝組常連のキャストに加え、信江役の安藤サクラ、信江の妹・亜紀役の松岡茉優らが是枝作品に初参加した。
2018年製作/120分/PG12/日本
配給:ギャガ
劇場公開日:2018年6月8日
引用元:https://eiga.com/movie/88449/
登場人物・キャスト
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/万引き家族
感想
2018年時点のカンヌ国際映画祭で日本映画としては、1997年の「うなぎ」以来21年ぶりとなる最高賞のパルムドール賞を受賞し、第91回アカデミー賞では10年ぶりとなる外国語映画賞にノミネートを果たし、第42回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞を含む8部門で最優秀賞を受賞した映画『万引き家族』。
いや~、かなり前にテレビでやっているのをかけ流し状態で見ましたが、『ベイビー・ブローカー』に感銘を受けたので、改めて観てみました。
かけ流しで観ていたときも感銘を受けた素晴らしい映画でしたが、やっぱり真剣に観ると新たな発見や、没入感も高く、素晴らしい映画であることを再確認しました( ̄▽ ̄)
日本だけに限らないと思いますが、日本の負の部分が色濃く描かれている、社会風刺映画となっています。
例えるなら以前感想を書いた『チェイサー』などもグロくて、残酷で、救われない社会風刺を扱っており、あまり万人受けする映画ではないと思うのに、韓国では大ヒットしたんですよね。
本作『万引き家族』もまさにそれで、一歩間違えれば鳴かず飛ばずで終わった可能性すらあります。
それでも多くの映画賞を受賞し、多くの人々の心の心をとらえたのは、『万引き家族』が持つメッセージ性の強さと、社会風刺に共感したからではないでしょうか。
聞いた話によると、『万引き家族』がヒットしていた2018年時点のネットニュースで、時の首相である安倍晋三さんが賛辞のコメントを出していないことが少し話題になっていたそうです。
安倍さんと言えば、日系人のノーベル文学賞受賞者であるカズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受賞したときや、平昌オリンピックの金メダリストたちにお祝いのコメントをされましたが、これほど話題になり、多くの快挙を成し遂げた『万引き家族』にはノーコメントなのです。
日本社会の負の部分を描いていることで、政府からはコメントし辛かったのだろうと言われているそうですね。
詳しく知りたい方は↓の記事をご確認ください。
裏を返せば、政府も認めるほど社会の負の部分を扱っているということでもありますよね( ̄▽ ̄)
貧困や虐待、人々の生き辛さ、核家族化による孤独。
今世界には約80億人の人間がいるとされています。
これはわかっている数なので、戸籍のない人、例えば中国の一人っ子政策で生まれた2人目の黒孩子(ヘイハイズ)のような子供たちは世界には多くいると思うので、80億人よりも人口は多いのかしれません。
ですが人口が増えたことで、人間の孤独は紛れたのでしょうか?
バニラは余計に孤独が深まったと思うのです。
人間が増えたことで代えが利くようになったというか、人口がもっと少なかった昔は人がいなければ、生活が回らず一人一人が自分の役割を与えられ、「自分は必要とされているんだ」という満足感が得られていたと思いますが、今は良くも悪くも代えが利きます。
宇野なずきさんという人のこんな詩をネットで見かけました。
「誰ひとり 君の代わりはいないけど 上位互換が出回っている」
すごい詩ですね( ̄▽ ̄)
つまり何が言いたいかというと、人が増えれば増えるほどに、人は孤独になっていくように感じるんですね。
けれど本作『万引き家族』に登場する家族には、みんな役割が与えられているのです。
彼らには代わりがいない。
弱いからこそ、一人一人が助け合って生きているのです。
リリー・フランキーさん演じる柴田治は
両親からネグレクトされているゆりちゃんを保護(世間的には誘拐)して、一緒に暮らすことになりますが、その期間ゆりちゃんにも万引きの手伝いをさせています。
犯罪の片棒を担がすことはいけないことですが、ゆりちゃんにも仕事を与えることで、柴田家にいやすくしてあげているんですよ……。
世間からどういわれようと、これは生きる術なんですね……。
治はこんなことを言っています「他に教えられることがなんにもないんです……」と。
治だってこんなことをさせてはいけないことはわかっているんですよ。
もっと、立派なことを教えてあげられるなら、教えてあげたいはずですよ。
でも、治には万引きしか教えてあげられないのです……。
自己責任論で片付けられてしまうご時世ですが、これは自己責任なのか?
だからといって、万引きを推奨しているわけではありませんが、社会正義に反することでしか生きられない人が世の中には沢山いるんです……。
そのような生きることへの悲しみがよく描かれていて、なんも言えなくなります(/_;)
それでも必死に生きるその姿から、とても勇気がもらえるんですよ(T▽T)