ストーリー
人気アニメ「ソードアート・オンライン」シリーズの伊藤智彦監督が、近未来の京都を舞台に描いたオリジナルのSF青春ラブストーリー。2027年、京都。内気な男子高校生・直実の前に、10年後の自分だという人物・ナオミが現れる。ナオミによると、直実はクラスメイトの瑠璃と結ばれるが、その後彼女は事故で命を落としてしまうのだという。直実は瑠璃を救うため、大人になった自分自身とバディを組んで未来を変えようと奔走する。しかしその中で、瑠璃に迫る運命やナオミの真の目的、そしてこの現実世界に隠された秘密を知り……。「君の膵臓をたべたい」の北村匠海が主人公・直実の声で声優に初挑戦。10年後からやって来たナオミの声を松坂桃李、ヒロイン・瑠璃の声を浜辺美波がそれぞれ演じる。「正解するカド」の野崎まどが脚本、「けいおん!」の堀口悠紀子がキャラクターデザインを担当。
引用元:https://eiga.com/movie/90380/
登場人物・キャスト
「声」は役を演じた声優。
主要登場人物[編集]
基本的には主人公である堅書直実とその未来の姿である先生(カタガキナオミ)、ヒロインである一行瑠璃という、限られた人間関係の中で物語が動く構成となっている[6][24]。直実と先生(ナオミ)は同一人物であるため、特に前半部分は実質的には主人公とヒロインの2人きりの関係性の中で物語が進展していくが[6]、ヒロインはマクガフィンに過ぎず、後半に向けて劇的に変化していく直実と先生(ナオミ)の関係性こそ主軸であると解釈することもできる[24]。
なお劇中には登場人物の年齢や誕生日への具体的な言及や、それを類推できる描写が幾つかあるものの、資料によって統一されていない[注釈 4]。
- 堅書 直実(かたがき なおみ)
- 声 - 北村匠海[3]
- 主人公[30]。2027年の京都(アルタラの中に再現された過去の世界)に住む高校1年生の男子。臆病で優柔不断で主体性がない性格だが、そんな自分を変えたいと思っている[31]。
- 読書好きでいつも本を読んでいるため、高校入学早々に図書委員を押しつけられるが、自分で立候補して決めたわけではないことに不満を感じていた[32]。一方、未来の自分自身だと名乗る先生(ナオミ)から突拍子もない世界の真実を聞かされても、「グレッグ・イーガンのSF小説[注釈 5]のよう」という感想を抱いてあっさりと受け入れるなど、高い順応性も見せている[36]。
- 好きな小説のジャンルはSFで、自分が物語の登場人物になれるような世界が現実の科学技術の延長線上に広がっていることにロマンを感じている[37]。自分が小説のような状況に遭遇することに憧れているが[38]、いざ遭遇すると恐怖して逃げ出す臆病さも持っており[39]、「現実の自分は主人公ではなくエキストラ」と自嘲する[40]。
- 当初は等身大の人物として描かれ[41]、2000年代に流行したセカイ系作品の主人公にみられる内向的な人物像を踏襲するが[42]、自己啓発によって己を変革し決断力を身につけ[42]、やがて瑠璃にとってのヒーローとして描かれるようになっていく[43]。本作品のキャラクターデザインを担当した堀口はこうした展開を踏まえ、初見では冴えなく見えるが映画を見終えるころには格好良く見えてくるような、垂れ目で太眉気味といった少し癖のある顔つきを意図したという[44]。
- カタガキ ナオミ / 先生(せんせい)
- 声 - 松坂桃李[3]、北村匠海(『ANOTHER WORLD』高校生時代)、松岡禎丞(『ANOTHER WORLD』大学生時代)[45]
- 2037年の未来(アルタラを創造した「現実世界」)から来た堅書直実を名乗る青年。立体映像のような存在であり触れることはできず、直実以外には姿が見えない。2027年の世界の直実と区別するため、映画のクレジットや小説版では名前がカタカナ表記される[注釈 6]。
- 仮想世界アルタラの中に再現された10年前の自分に会い、現実の未来で死亡した一行瑠璃が生存する仮想の歴史を作るため、「現実世界」から不正にアクセスしてきたと語る[47]。「現実世界」ではアルタラのシステム管轄メインディレクターという肩書きを持っており[48]、10年間の血の滲むような努力の末、アルタラに侵入する計画を実行可能とする役職と権限を手に入れた[49]。彼自身は直実以外のアルタラの事物に干渉することができないため、アルタラの住人である直実の助力を必要としている。
- 直実からは「先生」と呼ばれる。直実からは当初、自分と正反対の身勝手でがさつな、なりたくないタイプの大人という悪印象を持たれていたが[50]、行動を共にするうち、次第に直実とは兄弟のように想い合う関係となっていく[51]。その裏で直実に対して重大な隠し事をしており、本来の目的を伏せているが[52]、彼もまた自分が「現実世界」と信じる2037年の京都が仮想世界であるという真相を知らされないまま行動している[53]。
- 主人公の直実とは対照的な、普通とは異質な過去を背負った人物として描かれる[41]。瑠璃を挟んで劇的に変化していく直実との関係性は物語の軸となっており[24]、当初は直実の師匠のような存在として[24]、中盤では直実と敵対する悪役のようにも描かれるが[24][54]、結末のどんでん返しを観終えた上で最初から見直すと、彼が主人公のように見えるような描き方がされている[23]。本作品の脚本を担当した野﨑は彼について、執筆していて感情移入しやすい登場人物であり、主人公になりすぎないよう抑えて描くことを心がけたとしている[55]。
- 一行 瑠璃(いちぎょう るり)
- 声 - 浜辺美波[3]
- ヒロイン[56][6]。直実の同級生で、同じく読書好きで図書委員を務める。長い黒髪[57]と左目の下の泣きぼくろ[58]が外見上の特徴。「やってやりましょう」が口癖[24]。高校の売店では不人気メニューとされているねじりパンが好物[59]。
- 真面目で意志が強く、直実が怖じ気づいて敬遠する同級生や上級生に対しての注意勧告も淡々とこなす[60]。直実からは当初、容姿の整った美人だが自分の好みではなく[61]、無愛想[62]で冷徹そうな異性という印象を持たれていた[63]。その一方でデジタル機器の扱いが不得手[64]、極度の高所恐怖症で80センチの高さで失神する[65]、などの弱点を併せ持つギャップも見せており[66]、先生(ナオミ)からは「可愛い系」だと力説されている[67]。好きな小説のジャンルは冒険小説で、困難に進んで立ち向かう不屈の主人公に人生の理想を重ねている[68]。その一方、内心では現実の自分は主人公ではないし窮地を助けてくれるヒーローも存在しない、という諦観を抱いているが[69]、直実が非日常の世界に足を踏み込み不思議な力で自分を助けていることに気がつき[70]、彼こそが実は本物のヒーローなのではないかという思いを抱くようになる[71]。
- 先生(ナオミ)の語る「現実世界」の歴史通りに物事が進めば、物語開始から3か月後に直実と恋人同士になるが、初デートのために訪れた2027年7月3日の宇治川花火大会[注釈 7][72]の最中、朝霧橋[73]の橋上で突然の落雷によって命を落とす運命にあるとされ[72]、その運命を回避することが物語中盤までの目標となる。ただし、その真相には二重のどんでん返しが仕込まれており[74]、物語が核心に近づくにつれて二転三転する。
- カラス
- 声 - 釘宮理恵[75]
- 先生(ナオミ)から直実へと授けられたツールで、仮想世界であるアルタラのデータに干渉し、ごく限定的ながらも接触した物質の性質や働いている物理法則を変化させることができる権限を直実に付与する[76]。普段は太った八咫烏[77](日本の神話に登場する3本足のカラス)の姿をしているが、直実が能力を行使する際には神の手(グッドデザイン)と呼ばれる手袋の形態を取る。
- 直実にしか使いこなせず、先生(ナオミ)では幻影を出すことしかできない[78]。直実は当初、弱い力しか扱えず制御もままならなかったものの、運命の日に備えて習熟を重ねることにより、次第に武器や道具を無から生み出し天変地異を操る魔法のような力を行使できるようになっていく。
- 普段は野太い声で鳴き[79]、言葉を喋れないかのように装っているが、実は自分の意思や独自の目的を持っており、直実の行動を傍から黙って見守っている[80]。その真の正体は先生(ナオミ)が「現実世界」と誤認している2037年の仮想世界をアルタラII上でシミュレートしている2047年の世界の一行瑠璃なのだが、そのことは先生(ナオミ)にも知らされていなかった[81]。
- デザインワークスは浅野直之が担当した[82]。
サブキャラクター[編集]
- 勘解由小路 三鈴(かでのこうじ みすず)
- 声 - 福原遥[75]
- 学級は違うものの(1年C組[83])、直実や瑠璃とは図書委員の仲間で、委員会のアイドル的存在。人懐っこい性格の[84]、小柄で華奢で可愛らしい容姿の美少女で[85]、直実の第一印象では瑠璃よりも異性としての好意を持たれていた[86]。
- 親しい友人などからはかでのんという愛称で呼ばれる[87]。瑠璃にも何か愛称をつけようとしておりさまざまな呼び名を提案しているが、瑠璃からは冷淡にあしらわれている[88][注釈 8]。
- 直実と瑠璃の関係の進展を物陰からこっそり見守っており[79]、ふたりの間柄を訳知り顔で見守り冷やかすようになる[90]。図書委員会が毎年6月に開催しているチャリティー古本市のイベントを盛り上げようと、直実や瑠璃と共に奮闘する。
- 映画本編では物語を動かす立場にいない脇役であり[6]、中盤以降の展開には登場しないものの[91]、三鈴が主人公を務めるスピンオフ小説『HELLO WORLD if ――勘解由小路三鈴は世界で最初の失恋をする――』では、クライマックスの状況の裏舞台で主要登場人物を援護するために奮闘し、ラストシーンの状況にも深く関わっていたという物語が描かれている。また、漫画『はろー(らぶこめ)わーるど』では積極的に直実と瑠璃の間柄を進展させようとする役回りで、主要登場人物のひとりとして活躍する。
- 千古 恒久(せんこ つねひさ)
- 声 - 子安武人[75]
- 京斗大学教授。アルタラを管理する施設のセンター長[92]。太った中年男性[93]。子供のまま身体だけが成長したような自由な発想と非常識さを併せ持ち、数々の大きな功績を成し遂げた経歴を持つ[92]。2027年の世界での初登場場面などでチューリップを模した飾りがついた奇妙なカチューシャを被っているが、これは脳波を読み取ってドローンを無線操縦するための装置という設定[93]。
- 2037年の世界では57歳[92]。部下であった先生(ナオミ)が瑠璃を助けるために引き起こした、アルタラの異常を解決するために奮闘する。先生(ナオミ)にとって仕事の上では信頼できる師匠であり、それ以外では鬱陶しくて迷惑な人物[92]。
- 徐 依依(シュー・イーイー)
- 声 - 寿美菜子[75]
- 千古の助手。中国人で[94]、中文混じりの日本語で話す[注釈 9]。
- 千古の非常識さを補佐する役割を担っており、通常の職員の三倍の仕事をこなす[92]。
敵対者[編集]
- 狐面(キツネめん)[注釈 10]
- 仮想世界であるアルタラの自動修復システムで[96]、アルタラ内で発生した異常や、侵入した異物を排除しようとする存在[97]。アルタラの一般住人にとっては不可視の存在だが、侵入者である先生(ナオミ)や「神の手」を持つ直実からは、狐面を被り奇怪な体格をした作業員の姿として視認される[98]。身体能力は決して高くないものの[99]、際限なく増殖し、全員が両手に「神の手」(グッドデザイン)を標準装備する[100]。
- デザインワークスは小松田大全が担当[101]。キャラクター原案は漫画家の藤田和日郎によるもので、アニメ向けのリファインを小松田が担当している[102][103]。なお藤田の原案では作業服ではなく和服を着たデザインであったが、3DCG化が困難という理由で実現しなかった[102]。
- 第二形態[101]
- 映画クライマックス、京都駅での攻防に登場。複数の狐面が合体し、「神の手」(グッドデザイン)の形状を模した巨大な手袋の形態となる[104]。関節部分は巨大な目玉のようになっており、蜘蛛のように這ったり跳躍したりして移動する[105]。
- 直実が2027年世界に帰還しようとしているのを妨害するが、先生(ナオミ)のアドバイスを受けた直実の攻撃を受けて東本願寺まで吹き飛ばされる[106]。その後第三形態への変身を開始する。なお野﨑まどによる小説版(集英社文庫版)や、鈴木マナツ・曽野由大によるコミカライズ版では登場せず、最初から第三形態へと合体する[107][108]。
- 第三形態[101]
- 映画クライマックスに登場。巨大な怪獣[109]の姿へと合体した形態。野﨑まどによる小説版(集英社文庫版)では九本の尾を持ち[110]、二本足の狐のような四本足の人間のような代物[111]と形容され、また松田朱夏による小説版(集英社みらい文庫版)では、伝説の九尾の狐と形容するには醜く異形であると形容されている[112]。サウンドトラックの曲名や公式ビジュアルガイドでは九尾狐、九尾の狐とも呼ばれる[113][114]。
- 京都タワーを引き抜いて武器にし、直実と先生(ナオミ)を窮地に追い詰める。頭部から毛髪のように伸びた無数の管の先端のひとつひとつには狐面がついており、映画版では狐面を槍のように尖らせて[115](野﨑まど、および松田朱夏による小説版では頭部ではなく九本の尻尾の先端で[116])、雨のように攻撃を降り注がせることが可能。この攻撃は板野サーカス風の演出になっており[117]、実際に板野一郎が監修している[117]。
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/HELLO_WORLD_(アニメ映画)
感想
舐めてました(; ・`д・´)
S(すこし)F(ふしぎ)系のSFかと思ったら、戦闘描写を除けば割と本格的なSFでした。
設定がありそうでなかった斬新なものだったんですよ(`・ω・´)b
舞台となる近未来の京都では街全体をドローンのような装置でスキャンし、コンピューターの中で仮想現実を作る技術が確立されようとしている設定です。
そして、本作の舞台である京都はその仮想現実技術が実現化された10年後に作られた、仮想現実の中なんですね。
仮想現実という設定だったら『攻殻機動隊』や『マトリックス』などが有名ですが、『マトリックス』は現在進行形の仮想現実世界であるのに対し、本作はコンピューター内に作られた過去の京都が舞台ということです。
いや~文章で説明するのは難しい(>_<)
そして、その作られた仮想現実の世界では、なぜかデータによって作られた仮想現実の人々にAIともNPCとも違う、心(魂)があることなんです。
他人の心はクオリアであり、他我問題が扱うところですから、ただ心があるように見せかけているとも解釈できますが、今回はあるものと仮定しても、何故データによって作られた人々に心があるのは語られることはありません。
そんな仮想現実の世界の観測者(主人公)は堅書直実という主体性のないことをコンプレックスに持つ男の子です。
周囲に流される暮らしを送っていたある日、堅書くんの前に現実世界からやって来た、自分(以後:先生と表記)と出会いこれから未来に起こる事件の話を聞きます。
それは、未来で自分の彼女になるという一行瑠璃というクラスメイトが天災によって死んでしまうというものでした。
先生、つまり現実世界の自分は、死んでしまった一行さんを仮想現実の中でもいいから、助けるためにやって来たというのです。
普通に考えたら仮想現実で一行さんを助けても、現実世界で生きていないのなら意味がないと思えてしまいますが、先生からしたら仮想現実の世界でもいいから、一行さんの笑っている世界線が欲しかったのですよ(;´∀`)
その話を先生から聞いた堅書くんは、一行さんを助けるために「神の手」という仮想現実のデータを書き換えることのできるアイテム「グッド・デザイン」という手袋を受け取るのです。
Wikipediaに書かれた企画を読みましたが、本作では異世界転生物の作品と差別化するために、グッド・デザインを扱うための修行描写が設けられているそうです。
グッド・デザインは世界のルールを書き換えられるチートアイテムですが、万能のアイテムではないんですね(^▽^;)
堅書くんは「グッド・デザイン」を使いこなすために修行を積み、来るべき日に一行さんを助けるが……。
この話だけを聞くと、ヒロインの一行さんはただ助けられるだけの男に都合のいい女性として描かれていますが、そこは近年の男尊女卑廃絶の風潮を考慮して、一行にもアッと驚く役割が用意されています。
物語前半と後半で大きく価値観が変わるターニングポイントがあって、さらに最後にもうひとひねりどんでん返しが用意されているのです。
なんでどうしてそうなるの⁉ という勢いに任せたツッコミどころ満載な場面も多くありますが、『仮想現実』『水槽の脳のパラドックス』を扱った面白いSFなので、もしSF好きで本作を舐めている人がいるなら騙されたと思って観てみてください。
本当に騙されますから(`・ω・´)b