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邦画 歴史/ドラマ『たそがれ清兵衛』「そんな父のことを、私は誇りに思っております――」

引用元:松竹

ストーリー

INTRODUCTION
上映時間・129分
構想に10年以上を費やし、時代考証に一年以上をかけて、山田洋次監督が満を持して挑んだ渾身の一作。原作は2002年現在、文庫本の総発行部数が2300万部を超え、今もなお圧倒的な人気を誇る時代小説の第一人者・藤沢周平。主演は日本を代表する演技派俳優・真田広之。幼なじみのヒロインに映画賞総ナメの宮沢りえ。さらに世界的な舞踏家である田中泯が、清兵衛の敵役として息を呑む迫力ある演技を披露し、銀幕デビューを果たす。第76回米アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品

STORY
幕末、庄内・海坂藩の下級藩士・井口清兵衛(真田広之)は、妻に先立たれた後、幼いふたりの娘と年老いた母の世話、そして借金返済の内職の為に、御蔵役の勤めを終えるとすぐに帰宅することから、仲間から“たそがれ清兵衛“とあだ名されていた。ある日、かつて想いを寄せていた幼なじみで、酒乱の夫・甲田に離縁された朋江(宮沢りえ)の危難を救ったことから、剣の腕が立つことを知られた彼は、藩命により上意討ちの手に選ばれてしまう。秘めていた想いを朋江に打ち明け、一刀流の剣客・余吾(田中泯)の屋敷を訪れた清兵衛は、壮絶な戦いの末に余吾を倒す。その後、朋江と再婚した清兵衛。だが仕合わせも束の間、彼は戊辰戦争で命を落とすのだった。

引用元:https://www.shochiku.co.jp/cinema/database/04570/

登場人物・キャスト

飯沼家

その他

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/たそがれ清兵衛

感想

 日本時代劇映画の最高傑作とも評される『たそがれ清兵衛』。『武士の一分』『隠し剣 鬼の爪』そして今回『たそがれ清兵衛』を観て、山田洋次監督による藤沢周平時代劇三部作をコンプリートしました。

 

 確かに、日本時代劇映画の最高傑作と評される理由がわかりました。「何がわかった?」と訊かれると、言葉では説明できないのですが、視聴後『永遠のゼロ』を観たときのような余韻が残ると言いますか……。

 

『武士の一分』『隠し剣 鬼の爪』同様、実力隠し系最強主人公の井口清兵衛(通称:たそがれ清兵衛)は妻に先立たれ、二人の娘と認知症の母の面倒を見る、うだつが上がらない下級武士です。

 

 武士たるもの身だしなみは大切ですが、月代(さかやき)は伸び放題、髪は荒れ放題、忙しいため風呂に入っていないため、御上から嫌な顔をされるなどなど、うだつが上がらないのですが、「そんな父のことを、私は誇りに思っております」と清兵衛の娘は思っているんです(;´∀`)

引用元:映画『たそがれ清兵衛

 物語の前半から中盤まで、清兵衛のささやかな日常が淡々と描かれているだけですが、不思議と飽きさせないのですよ。他の武士たちよりは惨めに思える生活を送っているのですが、清兵衛は二人の娘の成長を見ているだけで幸せなのだというのです。

 

 悟り切っていますね(;´∀`) ですが、そんなささやかな生活すら御上の命令によって奪われようとしていました。御上は清兵衛に余吾善右衛門(よごぜん うえもん)の討伐を命じるのです。

 

 余吾善右衛門は何とか一刀流の達人で、送り込んだ刺客は返り討ちに遭い、そのため清兵衛に白羽の矢が立つわけです。清兵衛は長い間、刀から離れていて自分には余吾善右衛門を討つことはできないと一度は断るのですが、清兵衛に拒否権などなく、引き受けるしかありませんでした……。

 

 そして、清兵衛は余吾善右衛門の立てこもる家にやってくると「見逃してくれ」と命乞いをされてしまいます……。清兵衛は「あんたを切りに来た。それはできない」と断りますが、余吾善右衛門は自分の娘の骨を食べながら自分の過去を語り始めます。

引用元:映画『たそがれ清兵衛

 余吾善右衛門のかつての主君は家臣騒乱のお咎めを受けて切腹し、それが原因で余吾善右衛門は妻と子供を連れて、仕官を求めて放浪すること7年。その間、農民の手伝いや、お寺で施しを受けて何とか食いつないで来たそうです(;´∀`)

 

 ようやく海坂藩(藤沢周平の時代小説に登場する架空の藩)で仕官できたのは3年前のことでした。妻は心労の果てに旅先で息を引き取り、娘も病気で亡くなっていたのです。

 

 それでも余吾善右衛門は仕官してくれた主に報いるために仕えていましたが、藩士の後継者争いに敗れ粛清が始まり、その中に余吾善右衛門も含まれていたのです……。何も悪いことしていないのに、ただ政権が代わったため殺されるのだから納得いきませんよね(^▽^;) 

 

 余吾善右衛門は「長谷川殿の命は藩主の命と信じて、忠勤を励んだつもりである。それのどこが悪いのだ! 儂はどうして腹を切らねばならぬのだ!」と清兵衛に問うのです……。

 

 ナチスヒトラーしかり、ソ連スターリンしかり、イタリアのムッソリーニしかり、スペインのフランコしかり、いつの時代でも同じで、下の者は上の者に従うしかありません。

 

 余吾善右衛門に感化された清兵衛も自語りを始めて、苦労した末、武士の魂である刀を売ったことを打ち明けてしまうのですね……。すると余吾善右衛門は目を剝いて、木刀でこの余吾善右衛門を切りに来たことにプライドを傷つけられ、急に清兵衛に襲い掛かるのです!

 

「見逃してくれ」と言っていたのに、どのような心境の変化があったのか……? 壮絶な闘いの末、清兵衛が勝つのですが、その勝ち方がどうも不可解で、もしかすると余吾善右衛門は清兵衛を立てるためにあえて負けてやったのではないか? という観方もできるんですよ(。´・ω・)?

引用元:映画『たそがれ清兵衛

 余吾善右衛門が切りかかった時、刀が鴨居に引っかかったことで清兵衛に切られるのですが、彼ほどの剣の達人がそんな失敗をするでしょうか? 真剣勝負で周りが見えていなかったというわけでもなく、余吾善右衛門はちゃんと闘いの最中ですら、鴨居があることを確認して、鴨居に当たらないように部屋を移動するような所作すらしていたんですよ。

 

 観る人により解釈が変わりそうです。何はともあれ清兵衛は勝ちますが、清兵衛の幸せな生活は3年足らずで終わりを迎え、時代は流れ激動の明治維新により戊辰戦争が勃発。清兵衛は戦死してしまうのでした……。

 

 余吾善右衛門が言った通り武士の時代は終わり、変わることのできなかったラストサムライたちは淘汰され、年を取った清兵衛の娘が清兵衛の墓から立ち去るところで物語は終わるのです。

予告

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