ストーリー・解説
はぐれ忍びの牙神獣兵衛は、偶然出会った甲賀組のくノ一・陽炎を助けたことから、謎の忍び軍団・鬼門八人衆を敵に回すことになってしまう。そこに目をつけたのは鬼門八人衆の動向を探っていた公儀隠密・濁庵。獣兵衛は濁庵の好計にはまり、陽炎とともに鬼門八人衆の陰謀を探る羽目になる。彼らの目的とは?そして獣兵衛を導く宿命の対決とは?©川尻善昭・マッドハウス/フライングドッグ・東宝・ムービック
「妖獣都市」「バンパイアハンターD」の川尻善昭監督による時代劇アニメ。江戸時代前期。望月藩お抱えの甲賀組の忍びたちは、下田村に蔓延する謎の疫病を調査するため村に潜入するが、謎の忍び軍団・鬼門八人衆に襲撃され、ほぼ全滅してしまう。ただひとり生き残ったくノ一・陽炎は、主を持たない「はぐれ忍び」の牙神獣兵衛に偶然助けられる。自身も鬼門八人衆から命を狙われる身となった獣兵衛は、鬼門八人衆を追う公儀隠密・濁庵や陽炎と行動をともにすることに。次々と襲い来る刺客たちと壮絶な戦いを繰り広げる中、獣兵衛は自身の過去の因縁と向き合っていく。アメリカでは「Ninja Scroll」のタイトルでビデオ発売され人気を集めた。2003年には続編となるテレビアニメ「獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇」が制作された。
1993年製作/92分/日本
配給:東京テアトル
劇場公開日:1993年6月5日
引用元:https://eiga.com/movie/74063/
登場人物・キャスト
- 牙神獣兵衛(きばがみ じゅうべえ)
- 声 - 山寺宏一
- 本作の主人公。金で雇われるはぐれの忍び。たまたま通りかかった望月藩でくノ一・陽炎を助けたことから、鬼門衆との戦いに巻き込まれていく。目にもとまらぬ居合の太刀筋は、かまいたちとなって敵を切り刻む。
- かつては山城藩の忍び組の一員だった。藩主の命で私腹を肥やす奸臣たちを始末するが、組頭の氷室弦馬の策で仲間同士で殺しあう羽目になり、弦馬の首を刎ねて出奔。道中、公儀隠密の濁庵に毒を盛られ、百両と毒消しを条件に協力する。さらに戦っている相手・鬼門衆の頭領が弦馬と知り、彼らと戦うことに。くノ一の陽炎をあくまで女として扱い、自分の死期が迫っても陽炎を抱きはしなかった。ついには陽炎の死を看取り、自分の、そして彼女のために弦馬との決戦へ向かう。
- 冒頭では将軍家から拝領した宝刀を盗まれ恐喝された弱小藩に二十両で雇われ、宝刀の奪還を遂行した事が語られている。
- 陽炎(かげろう)
- 声 - 篠原恵美
- 望月藩に仕える甲賀組のくノ一。疫病が流行って全滅したという村へ組が総出で向かおうとしたとき、自分から加わる。平時は藩主のお毒見役を務めている。
- 毒が効かない体質で、その訳は「抱いた相手を殺す」ほど全身に染み込んだ毒のためである。蟲蔵が放った蜂の群れに対して、自ら前に立ち、痺れ薬を混ぜた花びらを空中に撒いた。自らの特異体質ゆえ、自らの命を粗末にし、他人を拒絶するところがあり、獣兵衛とたびたび衝突する。鬼門衆の目論見を知るやすぐさま、藩の家老に鳥を使って手紙を送り助けを求めるなど、ひたすら任務を遂行するだけに思えるが、獣兵衛が盛られた毒を消すには自分を抱かせるしかないと知るや、自分の身を獣兵衛にゆだねるなど、裏には彼女の思いの変化も読み取れる。しかしだまし討ちにあい、獣兵衛の腕の中で本音を打ち合け、最後の口づけを交わすと獣兵衛に感謝しながら事切れた。ラストで獣兵衛は陽炎の形見を刀に付けている。
- 濁庵(だくあん)
- 声 - 青野武
- 公儀隠密である雲水姿の老人。自分の任務に獣兵衛や陽炎も巻き込んでいく。
- 彼は前もって獣兵衛の過去や陽炎の能力を調べ、自らの計画に協力させる老獪さを持つ。自身の痩せこけた体をうまく利用して木の枝に擬態したり、腕がゴムのように伸びる技を持つ。伸縮自在の錫杖で飛び移ったりもしている。
- 氷室弦馬(ひむろ げんま)
- 声 - 郷里大輔
- 鬼門衆の頭領にして、鬼門八人衆の頭。望月藩でさまざまな謀略をめぐらす。筋骨隆々の肉体から繰り出されるパワーとスピードを兼ね備えた体術は、獣兵衛の剣術を凌駕する。
- かつては山城藩の忍び組の頭だった。策で忍び組の仲間同士を殺し合わせるが、生き残った獣兵衛に首を刎ねられてしまう。しかし「転生の技」と呼ばれる不死身の術を身に付けていたため、生き延びた。右腕を切り落とされてもその場でつなぎ合わせ、額が陥没して息絶えてもすぐに蘇生する。最後には融解した黄金と一体化し、海底深くへ沈んでいった。
- 鉄斎(てっさい)
- 声 - 大友龍三郎
- 巨大な独鈷(とっこ)をブーメランのように操る上に、皮膚を岩のように変質させる。
- 望月藩の甲賀組を壊滅させたが、その直後に陽炎を犯そうとしてその身に触れたために毒が回る。獣兵衛との戦いの最中に自分の体が崩れ始めたことで動揺し、直前に投げた自分の独鈷を頭に受けて絶命。その死に際に獣兵衛の顔跡を残していたため、紅里が獣兵衛の命をつけ狙う。
- シジマ
- 声 - 大森章督
- 左手が「鬼爪」という武器に改造されており、また影から自在に出入りできる。死体を人形のように操る術も持つ。
- 陽炎を操って獣兵衛を仕留めようとするが、獣兵衛に倒される。
- 紅里(べにさと)
- 声 - 高島雅羅
- 無数の毒蛇を操る究極の蛇使い。自分自身も蛇のように脱皮して逃げ出す。
- 両刀使いの弦馬の女であったが、百合丸に嫉妬され、獣兵衛を二度も仕損じしてしまった後、密かに巻きつけられた糸により粛清されてしまう。
- 現夢十郎(うつつ むじゅうろう)
- 声 - 若本規夫
- 盲目の剣士であるが、誘い込まれた竹林でも自在に走り回り、切り倒される竹の音にまぎれて切りかかって来た獣兵衛さえも圧倒する。さらには自らの盲目を逆手に取り、刀身で日差しを相手へ反射して目くらましも使う。
- 後一歩で獣兵衛を仕留められるといったところで偶然に阻まれ、獣兵衛に倒される。
- 百合丸(ゆりまる)
- 声 - 関俊彦
- 鬼門八人衆を指揮する容姿端麗の優男。
- 両刀使いの弦馬に抱かれていて、石榴の告白をはねつけた。そのために石榴に恨まれる。全身から発電し、頑丈な鋼線を相手に巻き付けて感電死させる。鋼線は弦馬との通信手段としても用いる。罠を仕掛けて獣兵衛を仕留めようとするが、自身も石榴の爆薬仕掛けにはめられ爆死してしまう。
- 石榴(ざくろ)
- 声 - 勝生真沙子
- 火薬を自在に操る女。
- 百合丸に告白したが拒絶され、恨みを持つ。爆薬仕掛けは火種を腹に埋め込んだねずみや人間を火薬の元まで行かせて発動させる。ついには百合丸を死に追いやるが、濁庵との戦闘の際に自らも油をかけられた上、火をつけられ爆死してしまう。
- 蟲蔵(むしぞう)
- 声 - 野本礼三
- スズメバチを自在に操る奇形の男。
- 背中の瘤は巨大なスズメバチの巣になっていて、大量の蜂で獣兵衛たちを襲うが、水に入ってしまった時に巣の中の蜂たちが逃げ場をなくして蟲蔵の体を食い破り始め、その隙を突かれて首を刎ねられる。
- 道陣(どうじん)
- 声 - 永井一郎
- 獣兵衛に邪魔をされたことから、冒頭で手下を率いて襲い掛かるが、あっさり倒された上に、入っていた仕掛けの人形を両断されてしまう。
- 覆面武士
- 声 - 阪脩
- 豊臣家の再興をもくろむ人物・闇公方(やみくぼう)に仕える家来衆の一人。
- 野望を秘めていた弦馬にあっさりと殺されてしまう。
- 半佐(はんざ)
- 声 - 森功至
- 望月藩に仕える甲賀組の頭。疫病が流行って全滅したという村へ組が総出で向かおうとした時、陽炎を置いていこうとしたが彼女が自分から加わってしまう。それなりに彼女を案じている。
- しかし襲撃してきた鉄斎に両腕を引きちぎられる。後に目と口を塞がれた上に石榴に爆薬の火種にされ、四散してしまった。
- 源八(げんぱち)
- 声 - 屋良有作
- 望月藩に仕える甲賀組の一人。疫病が流行って全滅したという村へ組が総出で向かおうとした時、襲撃してきた百合丸に倒されてしまう。
- 新九郎(しんくろう)
- 声 - 菅原淳一
- 山城藩の忍び組の一員だった。組頭の氷室弦馬の策で仲間同士で殺しあう羽目になり、掟に背けず獣兵衛に切りかかるが、獣兵衛に殺される。
- 榊兵部(さかき ひょうぶ)
- 声 - 森山周一郎
- 望月藩の家老。氷室弦馬に殺され、入れ替わられる。
- 村人
- 声 - 鈴木勝美
感想
はぐれ忍びの牙神獣兵衛は偶然出会った甲賀組のくノ一・陽炎(かげろう)を助けたことから謎の忍び集団『鬼門八人衆』を敵に回してしまうことになる。
そこに目をつけたのは鬼門八人衆の動向を探っていた公議隠密・濁庵。
獣兵衛は濁庵の好計にはまり、陽炎とともに鬼門八人衆の動向を探ることになる。
そして、獣兵衛は鬼門八人衆の動向を探るうちに、鬼門八人衆の頭領がかつて自分が殺したと思っていた氷室弦馬であることを知る……。
第一印象としては「『バジリスク ~甲賀忍法帖~』だ!」です。
「作者が同じなのかな?」と思い調べてみると、山田風太郎の『甲賀忍法帖』を原案としているのは同じですが、驚くことに作者は違うようです。
時系列としては、本作『獣兵衛忍法帖』の方が先なので、『バジリスク ~甲賀忍法帖~』は山田風太郎の『甲賀忍法帖』の他にも、『獣兵衛忍法帖』からも影響を受けていると思われます。
原案・原作となる『甲賀忍法帖』は日本の能力バトルの始祖と称される作品で、その『甲賀忍法帖』を原案・原作にしている『獣兵衛忍法帖』も現実の忍法とは異なり、超能力のような超常的な忍法バトルが繰り広げられる、ようはバトル漫画ですね。
様々な忍法(能力)バトルが繰り広げられて、最後の氷室弦馬との最終対決などなど、バトル漫画としても最高に面白いですが、獣兵衛と陽炎のロマンスもこの映画の見どころの一つでしょう。
バニラ山田風太郎の『甲賀忍法帖』を読んでいないので、わからないのですが、『バジリスク』の方にも、似た能力を持っている登場人物がいて、本作『獣兵衛忍法帖』の陽炎の能力は「自分を抱いた相手を毒殺する」という能力なのです。
二つの作品で同じ能力が登場するということは原案・原作となる『甲賀忍法帖』にも同じ能力が登場するのでしょう。
何ですか、その能力(≧▽≦)
最高のドラマが作れるじゃありませんか。
そんな、因果な宿命を背負った陽炎と、獣兵衛の恋の行方は……⁉
『バジリスク ~甲賀忍法帖~』系の作品が好きな人は絶対好きだと思います。
最近のアニメーション映画も当然素晴らしいですが、ひと昔前のアニメーション映画は最高に良いですね(≧▽≦)b