が娘の為に書き残した脚本を基にシルヴァン・ショメ監督がアニメーション映画にしたのが本作『イリュージョニスト』です。
ジャック・タチ自身をモデルにし時代に取り残された手品師タチシェフはヨーロッパ各地を巡業し生計を立てていました。そんなある日、タチシェフはスコットランドの離島でアリスという少女と出会います。
タチシェフが手品で靴を出してやると、アリスはタチシェフを魔法使いだと勘違いして次の目的地であるエジンバラまで付いて来てしまいます。
アリスはエジンバラで高価なコートや靴など様々なものをタチシェフにおねだりし、タチシェフはアリスが欲しがる服や靴をプレゼントしてやりるんですね(´・ω・)
でも、アリスの要求がエスカレートしてくるとタチシェフは「自分は魔法使いじゃない。手品師だ」と説明してやりますが、ドイツ語しか話せないアリスにはうまく伝わりません。
仕方なくタチシェフはガソリンスタンドのバイトやショーウィンドウに立って手品で商品を紹介するバイトなどを掛け持ちします。一方その頃、アリスは向かいのアパートに住む青年と恋仲になり愛を育んでいました。
時代の流れによりタチシェフを始め、タチシェフのかつての仲間である腹話術師や道化師たちの仕事は失われてしまったのです。タチシェフ自身も自分の古典的な手品はもう必要とされなくなったのだと悟り、アリスを青年に任せてエジンバラを一人去るところで物語は幕を閉じます――。
時代に取り残されてしまった人々と、新たな時代を歩いてゆくアリスたちの対比が何ともセンチメンタルな印象でした。言葉では言い表せない哀愁が作品に漂っているんですよね(´-ω-`)
子供の時のことを思い出し、昔と今を比べてノスタルジックな気持ちになることが誰しもあると思いますが、この映画を観ていると正にそのような気持ちになります。セリフがほとんどない映画ですが、キャラクターたちのコミカルな動きで喜怒哀楽を表現していて、画面アングルは終始引き気味、世界観を際立たせる生活臭や小物の描き込みに至るまで、まるで絵本を見ているかのように一コマの情報量が多いです。
作画も手描き時代のディズニーアニメ映画やゲームの『レイトン教授』シリーズを彷彿とさせられるといいますか、現代の日本アニメーションにはない良さがあるんですよね。喜劇王と呼ばれるチャップリンもそうですが、笑いとはセリフだけでとるものではなく一挙手一投足でもとることができるんですね('◇')ゞ