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ゆる~くアニメだとか、映画の感想文

映画 ホラー/ミステリー『LAMB ラム』「禁断が産まれる(※バニラ的考察あり)」

引用元:yahoo!映画-yahoo! JAPAN

 山間に暮らす羊飼いの夫婦、イングヴァルマリアは、羊から生まれたそれアダと名付け、我が子のように育てることを決める。しかし、夫婦の幸せな生活は長くは続かず、やがて破滅へと向かってゆくのだった――。

 

 主な登場人物は羊飼いの夫イングヴァルと妻のマリア、イングヴァルの弟ペートゥルとアダの4~5人で、ストーリーも決して入り組んではいませんが、視聴者への情報提示を極限までそぎ落とし、メタファー的な演出の数々に難解な印象を受けた映画でした( ̄▽ ̄)

 

 何の説明もなされぬまま物語の開始20分くらいまで、山間の美しい風景、犬や猫や羊と羊飼い夫婦の日常がドキュメンタリー調に流されるだけで、予備知識がなければどんな物語なのか絶対わからないです。

 

 ですが不安感を誘う不気味で不吉な音楽が常に流れ、画面も北欧の陰湿な雰囲気を帯びているので、視聴者はホラー映画を見せられているようにビクビク身構えることになるんですね:;(∩´﹏`∩);:

引用元:映画『LAMB ラム』

「画面が切り替わる瞬間などに、驚かされるかもしれない(;´・ω・)」と常に身構えていたのですが……いつまで経っても驚かされません。ホラーには大まかに、陰湿なジャパニーズ・ホラーと欧米などの悪魔系やスプラッター系、サイコ系のホラーがあると思います。

 

 ジャパニーズ・ホラーはじっくりじっくり人間の恐怖心をあおるだけ煽り、突然背後から「バッ!Σ(゚Д゚)」と脅かして来る系のあれで、悪魔系やスプラッター系はオカルト的な不気味さで、血が飛び散るあれですよね( ̄▽ ̄) 

 

 ですが、この『LAMB』のホラーはジャパニーズ・ホラーのようでありながら、悪魔系のホラーを彷彿とさせられ、かと思ったらサイコホラーぽくもあり、とても不思議なホラー(ホラー映画と言っていいのか?)なんですよ。

 

 何か不吉で良くないことが起こっているのはわかるけど、故意的に情報提示を削いでいるせいで視聴者は恐怖の正体がわからない。小説でいったら、信頼できない語り手によって描かれているミステリー・ホラーというか、主人公の夫婦すら信頼できず、謎を秘めた台詞の数々や、ユダヤキリスト教的象徴の数々に、進化心理学的恐怖(人間はわからないことに恐怖を感じる心理)を煽られる作りになってるんですね(;´・ω・)

 

 心を搔きむしられる感じで、何とも気持ち悪いです(誉め言葉です(^▽^;))。開始20分を過ぎるくらいでやっと、羊小屋で飼っていた羊から、アダが産まれ

引用元:映画『LAMB ラム』

この物語の方向性が少しだけわかり始めます。夫婦はアダが登場する以前、「タイムマシンで過去に戻れるとしたら」というような会話をしていて、恐らく二人には過去に良くないことがあったということが想像できます。

 

 その良くない過去とは子供に関することなのは間違いなく、物語の後半でアダの墓が

引用元:映画『LAMB ラム』

登場することから、恐らく夫婦の実の子供のアダは、病気なのか? 事故なのか? で死んでしまい、アダが亡くなる原因を作ったのは、夫婦にあり、二人はその罪の十字架を背負っていると考察できます。

 

 亡くなってしまった我が子への罪滅ぼしのように、夫婦はアダを我が子のように可愛がるんですよ(;´・ω・) 夫のイングヴァルも妻マリアを気遣っているような印象を受けるので、恐らくアダが亡くなった原因はマリアにあるのではないでしょうか?

 

 メタファー的な話になりますが、妻の名前がマリアで、子供が羊というのはキリスト教的メタファーだと考察できます。マリアはイエスの母の名前や、マグダラのマリアなど聖書にはよく登場する名前ですし、羊とは「神の子羊」であるイエスの象徴でもあります。

 

 映画のポスターだって、明らかに聖母子画を意識している構図ですよね……。そんな安直なメタファーなのか、それともミスリードなのかはわかりませんが、妻マリアと、アダをキリスト教的象徴のマリアとイエスだと解釈しましょう。

 

 キリスト教聖典である福音書によれば、イエスはマリアの処女妊娠で誕生したことになっています。では、アダ=イエスはマリアの処女妊娠で産まれたのではなく、羊小屋の羊から産まれたアダを、夫婦が奪ってしまったんですよ。

 

 では、アダの父親は何者になるのか? ということになりますよね。アダをイエスだと解釈すれば、アダの父親は「」となりますよね( ̄▽ ̄) そして神の子イエス磔刑に処されることで、人間の罪を贖罪したと言われています。

 

 つまり、アダ=イエスはマリアの罪を背負うために夫婦の元に現れたという解釈ができます。ですが、アダはマリアたちに一時の心の救済を与えますが、ラストでアダの本当の父親だと思われる羊人間に連れていかれ、その際夫のイングヴァルを殺されてしまうのです。

引用元:映画『LAMB ラム』

引用元:映画『LAMB ラム』

 銃を持った羊人間の画像を見てもらえればわかると思いますが、この羊人間をギリシャ神話のパニックの語源となったパンに当てはめる意見が多いんですよ。パンは羊の群れを監視する神であり、好色だと言われているので、本作のテーマに合っています。

 

 もしこの獣人がパンだとすると、パンは羊ではなく山羊だとされているので、アダ=イエス=羊という考察が当てはまらなくなるんですよ。キリスト教では、異教だからという理由で、他宗教の神を悪魔にしています。

 

 例えば、蠅の王と呼ばれる悪魔ベルゼブブバアル・ゼブルという神だと言われていますし、ソロモン72柱の悪魔たちも、もとは少数民族が崇拝していた神々だと言われています。

 

 そして、ギリシャ神話の神であるパンは、ユダヤキリスト教に悪魔のシンボルにされたのです。アダを羊=イエスと思わせていたのはミスリードで、実は山羊=パン=悪魔なら本作のキャッチコピーである「禁断(悪魔)が産まれる」という説明とラストが救済ではなく破滅になってしまった説明が付きます(^▽^;)

 

 もしアダの父パン=悪魔なら面白いことになりますよね( ̄▽ ̄) アダをイエスのメタファーにしているなら、イエスは悪魔の子と言っていることになり、キリスト教批判の悪魔映画になるからです(※恐らくそんなつもりはなかったと思いますけどね(^▽^;))。

 

 と、まあ、想像力を働かせすぎましたが、作品の雰囲気が『パンズ・ラビリンス』とか『ぼくのエリ 200歳の少女』の陰鬱な感じが似ているので、人によっては好みが分れる作品なのは間違いありませんが、自然風景の撮影がドキュメンタリー映画のように綺麗ですし、考察の余地がある作品が好きな人には刺さると思います('◇')ゞ

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