ゆる文

ゆる~くアニメだとか、映画の感想文

アニメ ドラマ/ミステリー『ブラック・ジャック〈OVA〉』「それでも私は人をなおすんだっ 自分が生きるために!!」

引用元:Amazon

 白い巨塔の崩壊は留まるところを知らず、命のやり取りをする医療は低迷を極めていた。有名大学病院はブランド力の強化に奔走し、一方、高いスキルを持つ外科医は高額な金で海外に流出。医学界はさらなるグローバルな弱肉強食の時代に突入した。そんな中、どこの組織にも属さない無免許医、すなわち一匹狼のドクターが現れた。例えばこの男。群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、無免許医のライセンスと叩き上げまくりのスキルだけが彼の武器だ。万能医、間黒男、またの名をブラック・ジャック――。

 

 元祖、群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、無免許医のライセンスと叩き上げのスキルを武器にした一匹狼のドクター、かの天才、手塚治虫が世に送り出した医療漫画の金字塔『ブラック・ジャック』を原作として出崎統(でざき おさむ)さん監督でアレンジされたOVAシリーズです(≧▽≦) 出崎さんの経歴を調べてみたら『あしたのジョー』『エースをねらえ!』『ガンバの冒険』『宝島』などを手掛けた人だということを初めて知って驚きましたΣ(゚Д゚) 

 

 日本アニメ界を牽引してきたレジェンドじゃないですか! シーンの見せ場や変わり目などで劇画タッチの静止画になる演出は出崎さんの発明だったのですね。最近のアニメも面白いですが、昔のアニメって現代のアニメでは決して描けない不思議な力があると常々思います。最近はほぼ100%デジタル制作になりましたが、昔はセル画という画材に絵を重ねて制作するスタイルだったそうです。当然デジタル以上にアナログは大変ですよね。デジタル画も当然素晴らしいですが、アナログはデジタルでは出せない味があります(*´▽`*) 

 

 例えば、最近の『ワンピース』を見ていて思うのですが、グランドライン編のワンピースの作画が好きでした(ワンピースもいつからセル画からデジタルに移行したかわかりませんが……)。まあ何が言いたいって、この『ブラック・ジャックOVA〉』はセル画時代の作品ですから、手塚治虫さんのストーリーっと出崎さんの演出が相まって迫力が凄いです(≧▽≦) 

 

 どの話も傑作ぞろいの全12話「カルテ1:流氷、キマイラの男(原作:ハリケーン)」「カルテ2:葬列遊戯(完全オリジナル)」「カルテ3:マリアたちの勲章(原作:約束)」「カルテ4:拒食、ふたりの黒い医者(原作:ふたりの黒い医者、あるスターの死)」「カルテ5:サンメリーダのフクロウ(原作:過ぎさりし一瞬)」「カルテ6:雪の夜ばなし、恋姫(完全オリジナル)」「カルテ7:白い正義(原作:白い正義)」「カルテ8:緑の想い(原作:木の芽、老人と木)」「カルテ9:人面瘡(原作:人面瘡)」「カルテ10:しずむ女(原作:しずむ女)』になります。

 

 カルテ11とカルテ12はFINALという枠組みで個別に分けられているので今回は取り上げません。バニラは原作の『ブラック・ジャック』を読んだことがないので、原作との差異はわかりませんが、どの作品も哲学的です(´・ω・`) すべて傑作と呼べますが、バニラが特に良いと思ったのは『カルテ4:ふたりの黒い医者』『カルテ7:白い正義』『カルテ8:緑の想い』『カルテ9:人面瘡』『カルテ10:しずむ女』の五話です。『ふたりの黒い医者』では安楽死と人間の尊厳のテーマが強く扱われ、『白い正義』では医者たちの名誉や権威よりも患者を優先すべきという話です。

 

『緑の想い』は突然体に植物が生えて来た少年と、何千年も生き続ける大樹と老人の話で、『人面瘡』は人の心の問題を取り上げられます。『しずむ女』では公害病で苦しむ人々のリアルな問題と、ブラック・ジャック先生のことを好きになった少女月子ちゃんが、最後人魚姫のように死んでしまう話なんですね(;´Д`) 月子ちゃんは本当に人魚だったのではないかと考察がはかどる幕引きになっていました。

 

 人間は必ず病みます。仏教の四苦八苦の中に生老病死が含まれている通り、生まれて、老いて、病んで、死ぬ、生まれたからには逃れられない運命でしょう(´・ω・`) 医療とはそれらすべてに深く関わるもので、医療ドラマは人間ドラマです。生老病死に答えはありませんが、答えのない問いに挑む患者と医者の姿は生きるとは死ぬとはなどの言葉にできない感情がこみ上げてきて、考えさせられるものがありますね(´-ω-`)――。